ルネサス エレクトロニクスは11月12日、民生、産業、OA分野といった組み込み機器向けに新たなCPUコアとなる「RXv2」を発表した。サンプル出荷を2014年第1四半期より開始する計画という。

近年、1チップマイコンを使用する組み込み機器では、機器の高付加価値化、システムの複雑化に対応するため、搭載するマイコンにも処理性能の向上が求められている。特に、モータ制御やメカ制御などの産業分野、OA分野、エアコンや洗濯機などの民生分野では、モータやメカ制御のリアルタイム性向上および安定性向上のため、CPUには高い処理性能が求められる。また一方で、低消費電力化も重要な課題となっている。性能を向上させる手法としては、動作周波数を上げるのが一般的だが、単純な動作周波数の向上は動作電流の増大を招くため、電源回路の再設計やシステム基板のノイズ対策など、さまざまな弊害が発生する。このような背景から、マイコンには処理性能を高めながら、消費電流の低減、システムコストの抑制といったニーズが寄せられている。

RXv2では、これらの市場ニーズに応えるべく、既存の32ビットCISC CPU「RXv1」との互換性を持たせつつ、CPUの高性能化と低消費電力化の両立が図られている。RXv1では、CISCマイコンの複合命令実行により処理能力の向上が図れるのに加え、これまでのCPU開発で培ってきたRISCの高速化手法の融合が図られており、CISCのバイト可変長命令などにRISCの汎用レジスタマシン、ハーバードアーキテクチャ、5段パイプラインなどが加えられているが、RXv2では、こうした特徴をさらに進化させ、同一周波数において従来品より約1.25倍(目標)高い演算性能、既存同等品に比べて40%低い消費電力(目標)、高いコード効率による使用メモリ消費量の低減などを実現したとしている。

また、演算性能の向上においては、RXファミリのCPUに共通する特徴の1つであるFPU(浮動小数点演算装置)で用いられる汎用レジスタを使用する命令セットの処理サイクルを短縮させており、高い演算性能を実現したほか、DSP機能を強化するために専用アキュムレータを72ビット2本(RXv1コアでは64ビット1本)に増強しており、これによりDSPによる32ビット固定小数点の積和演算にも柔軟に対応することが可能になった。加えて、これらDSP/FPU演算とメモリアクセスの同時実行を可能にすることで、信号処理能力の向上を実現している。

さらに、CPUの処理性能を引きだすための開発環境として、高効率のCコンパイラの提供が求められることから、同CPUコアの開発段階からIARシステムズと情報を共有することで、対応コンパイラも提供可能な状態とすることで、利便性の向上も図られている。すでにIARの統合開発環境「RX向けIAR Embedded Workbench」では、4.0CoreMark/MHzを超える性能を実現し、新CPUコアの性能を最大限に引き出すことが可能になっているとしている。

加えて、新CPUコアでは、最大300MHzで動作可能なアーキテクチャを採用したほか、内蔵フラッシュメモリのWaitの最適化と高速分岐を実現するAFU(Advanced Fetch Unit)を新たに搭載。一般的なプロセッサでは、Waitの削減と分岐発生時のペナルティを緩和するためにキャッシュ方式を採用するが、新CPUコアはそのキャッシュ方式を内蔵フラッシュメモリ向けに最適化したAFUにより、メモリアクセス回数自体を削減することで消費電力の増大とWaitや分岐発生時のペナルティを緩和させた。これらにより、低消費電力化とメモリアクセス性能の向上という2つの課題を同時に解決したほか、40nmプロセスの採用により、消費電力の40%低減も実現したという。

このほか、独自の統合開発環境 「CubeSuite+」、Eclipseベースの統合開発環境「e2 studio」をベースにCコンパイラ、OS、ミドルウェアをサポートすることにより開発初期段階の投資を抑えられることに加え、評価ボードとOS、ミドルウェア、周辺ドライバを一括提供する「RX Software Package」を新CPUコアが搭載されたマイコンの市場投入に同期して準備するとともに、OSやミドルウェアのパートナー企業との連携も強化することにより、ユーザーの開発効率の向上に寄与するとしている。

なお同社では、今後、RXファミリを採用したユーザーに向けてGUIによる対話形式で周辺機能の設定プログラムを自動生成するコードジェネレータも整備することで、初期立ち上げが容易な開発環境を製品化に合わせて準備していく計画とコメントしている。