ネットワンシステムズは11月11日、同社が社内で実施したワークスタイル変革に関する成果発表会を開催した。VDI(Virtual Desktop Infrastructure : 仮想デスクトップ)やUC(Unified Communication)などの導入により、システム管理コスト削減、生産性向上、各種リスク低減などが実現されており、それらの効果を金額ベースで算出している。
ネットワンシステムズ ビジネス推進グループ 第2製品技術部 部長の松本陽一氏 |
説明を行った、ネットワンシステムズ ビジネス推進グループ 第2製品技術部 部長の松本陽一氏は、今回のワークスタイル変革について、2010年に着手し、固定的なPCに依存した"物理オフィス"から、部分的に移行した"移行期オフィス"を経て、VDI/UCにより端末から切り離された"仮想オフィス"へと段階的に作業を進めてきたことを紹介。効果算出の目的については、「自社の指標として用いるのはもちろん、お客様に対する提案の際に導入効果を具体的に説明できる事例を用意したかった」と説明している。
ネットワンシステムズでは、今回の導入効果について「CAPEX(設備投資コスト)」、「OPEX(運用コスト)」、「リスク低減」、「生産性向上」、「イノベーション」の5項目で測っている。
それぞれの効果は以下のとおり。なお、ネットワンシステムズの現在の社員数は3000人弱。
上記5項目のうち、CAPEXに関しては、移行期に既存のPCを残しつつVDI基盤を導入したため、純粋にコスト増という結果だったものの、移行完了後は「以前は毎年400、500台のPCを新規購入していた」分のコストがなくなったことなどから、3億54000万円分のコスト減があったとした。
一方、OPEXについては、移行期間に8871万円増、移行完了後に4億6692億円減という数値が発表された。VDIの初期導入時にVDI専用のヘルプデスクを用意したことから1億2720万円のコスト増があったが、ノウハウの蓄積とともにヘルプデスクの人員を削減。そのうえ、VDIにより仮想マシンを複製するだけでユーザーの環境を用意できるようになり、PC導入時に行っていたイメージコピーやネットワークの設定が不要になったことから、完全移行後は3億4240万円という大きなコスト減が実現されたという。
そのほか、VDIにより会社に戻らなくても仕事ができるようになったこと、UC(特にビデオ会議)の導入により遠地拠点への出張を減らせたことにより、交通費においても9623万円削減。さらにVDI/ビデオ会議を活かした情報共有により、文書印刷費が3000万円減といった効果も挙げられている。
続く、リスク低減については、「今回のワークスタイル変革の大きなモチベーションの1つ」(松本氏)と説明。「特にPC紛失/盗難時のリスクを減らしたかった」(松本氏)としたうえで、紛失/盗難時のお客様対応作業の削減として8960万円を計上した。ただし松本氏は、「信頼の失墜、企業価値の目減りといった損失も考えられるが、それは換算できなかった」とし、金額で表せない効果もあることを強調した。
また、リスク低減において大きなコスト削減項目として計上されているのが、「パンデミック、交通マヒ時の業務継続リスク」である。年1回、2日間、社員の7割程度が出社できなかったと考え、年間売上を基に損失額を計算した結果、5億7600万円に上ったという。その他、リスク低減においては、「外部記憶媒体の持ち出しによる情報漏洩リスク」や、「ウイルス対策ソフトの定義ファイルおよびOS等のパッチ適用漏れによるウィルス感染リスク」などを挙げ、合計で8億4691万円分の効果が上げられている。
生産性向上に関しては、テレワークや直行・直帰により、残業代が3億7152万円削減。さらに遠地出張回数減に伴い削減された移動時間を金額換算して4810万円が効果として算入されている。さらに「ビデオ会議システムによるコミュニケーション強化」、「社内業務(服務処理)に費やす時間の削減」、「決済承認速度の向上」などが検討され、合計で8億8490万円減という結果になっている。
イノベーションについては、金額換算されていないものの、社員満足度調査の結果が示された。それによると、「私生活が良くなった」と答えた社員が8割、「悪くなった」と答えた社員は皆無。仕事に対する満足度においても、「良くなった」が7割に上っており、「7%の社員が『悪くなった』と答えているが、詳細を聞くとツールに対する使い勝手が原因で、慣れとともに解消されうる内容だった」(松本氏)とし、全体としては大きな成功であることを明かした。
松本氏は、こうした効果の発表と併せて、東京都千代田区 JPタワーの本社オフィスに設置している「ソリューション・ブリーフィング・センター」において、合計160回のデモを行ったことを説明。さらに、デモのメニューに「ストラテジー」、「カスタマーデマンド」、「ユーザーエクスペリエンス」の3つを加えたほか、試しに小規模に導入して効果を確認できる新メニュー「Proof of Concept」を新たに用意したことも発表した。
Proof of Conceptに関しては、「事業継続/災害対策」、「仮想デスクトップ」、「データバックアップ」、「UC無線環境」の4種類が準備され、いずれも無償で提供されるという。