東北大学は11月8日、金属用3Dプリンタ「電子ビーム積層造形装置」を用いて、人工股関節などに用いられている医療用コバルト-クロム合金を造形すると、原子の周期配列が一方向にそろうことを見出したと発表した。
成果は、東北大 金属材料研究所の千葉晶彦教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米学術雑誌「Acta Materialia」に近日中に掲載される予定だ。
電子ビーム積層造形装置は、3Dプリンタの中でも金属製品の造形が可能で、特に信頼性の高い造形物が得られることが期待されている装置である。3Dプリンタにはさまざまな方式があるが、電子ビーム積層造形では、平らに敷き詰められた金属粉末の上を高速で電子ビームを走査することで、必要な部分だけを溶融凝固させて固める仕組みだ。同装置は国内に4台しかなく、公的な研究機関では唯一、東北大学が導入している。
なおこの現象は、コバルト合金以外の合金でも生じると考えられるとする。今回の成果により、3Dプリンタで人工関節を製造する際に最適な設計が可能となるという。そのほかにもジェットエンジンのタービンブレードやなど、さまざまな金属製品の開発においても、3Dプリンタを用いて製造できる可能性があるとしている。
また原料粉末には、国産のコバルト-クロム合金が用いられた形だ。現在はそのほとんどを欧米から輸入している人工関節の国産化にも大きな弾みをつけられることが期待されるという。
なお、下の画像は、3Dプリントされた人工関節用コバルト合金の結晶方位(原子配列方向)の分布を撮影したもの。色は結晶方位を表している。適切に条件を選ぶと、左側(全面が赤の方位になっている)の画像のように結晶方位をそろえることが可能だ。