NECと宮城大学は11月8日、高齢化・過疎化が進む地域コミュニティの活性化を支援するビジネスの事業化に向けて、共同研究を開始することを発表した。

NECは、宮城県亘理町の宮前仮設住宅85世帯において、地域コミュニティの形成支援や情報格差解消などを目的に、地上デジタルテレビの空きチャンネルを活用した「まちづくりコミュニティ形成支援システム」の実証テストを2012年3月から行っている。同システムは、自治会や住民、自治体が主体的に家庭用ビデオカメラを用いて自ら撮影した生活に密着したコンテンツを、超小型送信ユニットを用いて簡単な操作で近隣世帯の地上デジタルテレビに配信するものである。

この実証テストを通じて宮前仮設住宅では、公的機関から提供される情報の確実な伝達に加えて、次の成果が得られたという。

  • 番組をきっかけにイベント情報を知ることで、集会所に出向く人が増えた
  • 番組を見た近所の住民同士で共通の話題が増え、会話が活発になった
  • 出演の少ない人に声をかけるなど、住民が相互に見守る活動が生まれた
  • 番組に自ら進んで出演したり、料理の得意な人は作り方を紹介するなど、互いの得意技を披露したりすることで、生活に張りが生まれてきた
  • 仮設住宅全体に大家族のような雰囲気が生まれてきた

NECは発表の中で、こうした成果の一方で、さまざまな地域コミュニティで同システムを活用するためのいくつかの課題も見えてきたとしている。

NECと宮城大学は、本実証テストの結果を踏まえ、同システムを中核に、東北地方をはじめ日本全国の地域コミュニティ活性化を支援するビジネスの事業化に向けた共同研究を行う。

具体的な研究テーマは、地域コミュニティ形成における運営のあり方、行政・商店街・地元事業者などとの連携の仕方、住民合意形成の進め方、地域の課題解決を住民同士で進めるための方法、アクティブシニアの積極的な活用策などを予定している。今後、宮城県加美町の中新田商店街や、宮城県大崎市の中心市街地において実証テストを検討していく予定とのことだ。

東日本大震災は東北地方の生活環境や地域経済に甚大な影響を与えたが、同時に地域コミュニティの力の重要性を改めて認識する結果となった。地域コミュニティ力を再生する情報インフラの整備は、東北再生のみならず日本のソーシャルイノベーションを加速させる鍵となる。

地域住民のニーズを満たすコンテンツは、住民の身近にある情報やエンターテイメントへと移行し始めている。NECによれば、本システムは、住民自らがコンテンツ作成に携わることで当事者たちのニーズを充足し、近所の人と共通の話題を得ることで人と人との繋がりを生むきっかけにもなりうる。また、テレビによるコンテンツ受信という基本構造は、誰もが情報を共有できる機会を創出し、地域の情報格差軽減も期待できるという。

NECと宮城大学は、同ビジネスの事業化を通じて、地域の絆を強め、地域自律型・住民主体のまちづくりや、行政・企業・市民などの多様な連携による持続的で豊かな地域コミュニティの創造に貢献していきたいとしている。