NECは11月7日、公共空間や大型施設において、防犯カメラなどで撮影された群衆映像から、個人を特定することなく混雑状況を把握するとともに、異変を検知する群衆行動解析技術を開発したと発表した。

多くの人が集う公共空間や大型施設は、異常な混雑が生じた場合に集団で転倒するなどの事故が発生したり、犯罪やテロの対象となるなどのリスクがある。そのため、多くの施設で設置されている防犯カメラを活用し、混雑環境での事件・事故を未然に防ぐことや、被害を最小限に抑えることが期待されている。しかし、これまでは数百人が複雑に行き交う混雑環境下において、発生しうるさまざまな異常を早期に発見したり、異常の詳細を推定することは困難だった。

今回開発した技術は、事件・事故の発生やその兆しが、周りの群衆や集団の行動に影響を与える点に着目し、異変につながる"群衆全体の動きの変化"を正確にとらえて解析する。これにより、例えば、ラッシュ時間帯の駅やイベント会場のように非常に混雑した環境下でも、混雑度を高精度に推定できるとともに、人の流れの急激な変化や、人の流れに逆らって滞留している集団、人の転倒時の周りに生じる人垣などを既設の防犯カメラを用いて検知できる。また、人の固まりに対して解析を行うため、個人を特定することなく状況を把握することが可能となっている。

具体的には、混雑度や各人の挙動などが異なるさまざまな状態の群衆画像をシミュレーションによって擬似的に生成する。その画像と防犯カメラなどの映像を、独自のアルゴリズムを採用した画像認識技術によって個人を区別せずに照合・解析する。これにより、人と人が重なって見えるほどの混雑時も、群衆の状況を高精度に把握できる。

さらに、異常が発生した際、その周囲の人々の行動変化に着目した。例えば、公共空間で見知らぬ2人が口論を開始した場合に、周囲の人々が一時停止したり取り囲んだりする行動パターンを緻密に解析し、異常が発生した場所に加え、予め閾値を設定することで、その変化の大きさから異常レベルも推定できるという。

NECでは、今後もセーフティ事業の拡大に向けた映像処理・解析技術の開発に積極的に取り組むことで、安全・安心な社会の実現を目指すとしている。

あらかじめシミュレーションで擬似的に生成した多量の群衆画像と防犯カメラ画像を、独自のアルゴリズムで比較・照合。さらに、個人を特定することなく、人々のかたまり(緑色矩形)として解析する

群衆の変化を正確かつ瞬時に解析できる。異常が発生した際に、周囲の人々の行動変化に着目し、想定を超える混雑や滞留を即座に検知し、異常性を判定できる