昨年スタートしたサッポロビールの商品開発コミュニティ「百人ビール・ラボ」は、すべてのプロセスをFacebook上に公開し、ユーザーからの意見を反映しながら新製品を開発するという「共創」プロジェクトとして大変話題となりました。現在開催されている第二弾ではFacebookページから更に企画領域を広げ、O2Oやゲーミフィケーションといった要素を巧みに取り入れています。

ソーシャルメディアを活用した共創の先駆け「百人ビール・ラボ」

ソーシャルメディアで消費者との距離が近くなり、注目を浴びているファンとの「共創」。昨年、サッポロビール株式会社が「百人ビール・ラボ」で、Facebookを通じてファンと新商品を共同開発し、いちはやく「共創」に取り組んだことで注目を浴びたのは記憶に新しいのではないでしょうか。

「百人ビール・ラボ」第二弾特設サイト
http://100beer.sapporobeer.jp/aboutus

半年掛けて”会議”を行いながらビール愛好家からアイデアを募り、商品コンセプト、味、パッケージまで1から作り上げるという「百人ビール・ラボ」のFacebookページには、延べ1万2000人のビール愛好家が参加、計8,500件ものコメントを元に、「百人のキセキ」という新製品が開発されました。

完成した「百人のキセキ」は、サッポロビール直販サイトのみで限定数の販売だったにもかかわらず注文が殺到。「1ヶ月ぐらいで売り切れたら…」という担当者の予想を大きく上回り、わずか1週間程度で完売し、プロジェクトは大成功を収めました。

今回は2013年7月から始動し、11月末発表・12月発売に向けて現在山場を迎えている第二弾プロジェクトをご紹介したいと思います。第一弾ではFacebookページだけで行われていたコミュニケーションをオウンドメディアやリアルイベントにも広げ、参加ユーザーの裾野を広げることに成功していることにご注目下さい。

第二弾実施の背景とは?

評判を生んだ百人ビール・ラボ第一弾でしたが、Facebookページ上でのみ展開された会議は発言者に偏りが出てしまったそうで、コアなファンを産み出すことには成功しましたが、幅広いファンの獲得には課題が残りました。

そこで今回は、より多くの人に気軽に参加してもらい、沢山の声を平等に吸い上げられるようにする目的でオウンドメディアに特設サイトを開設、投票制を導入し、プロジェクトへの参加窓口を広げました。これにより、プロジェクトにとって最初の山場となった第2回のビールタイプ決選投票イベント開催時点で、のべ3万6,000人の参加者を集めることに成功しました。

リアルイベントでプロジェクトへの参加熱意を醸成

第一弾では完成した商品のお披露目の際にイベントを開催しましたが、第二弾ではプロジェクト開始早々の9月に、商品開発のスタートとなるビールタイプの決選投票イベントを開催。

このビールタイプ決選投票イベントの開会あいさつで、サッポロビール株式会社 営業本部 企画推進部の大谷光弘部長は、「みなさんと一緒に創る商品に、ビール市場を変えるインパクトを期待しています。今、日本で小売店に出回っているビールの約99%はピルスナータイプ。今回の結果によって、ピルスナー以外の他の種類のビールも市場に増やしていけたらと思います。」と語りました。

イベント参加者の声

(女性)「前回の百人ビール・ラボは知らなかったが、友達がFacebookで今回の百人ビール・ラボに、いいね!をしているのを見て、知りました。

たとえ、自分が投票したものが商品化されなくても自分が関わったものが商品化されたら、思い入れも強くなりますね。こういったイベントで、ビール好きの人たちの意見が反映されて出来たものだということがわかるので応援したくなります。

元々クラフトビールが好きなので、今回のイベントによってピルスナー以外の種類がマーケットに出回るようになるかもしれないことに期待しています!」

(男性)「前回も参加しました。”百人のキセキ”も何本も購入して家族や友人に配ったり、ソーシャルメディア上でも勧めました。少しでも自分が関わった商品ということで、やっぱり愛着が湧きます。」

(男性)「前回参加して、自分が関わったビールが商品化される喜びを体験しました。自分で購入したのはもちろん、周りの友人にも積極的に進めましたよ。“百人のキセキ”が飲める限定店舗で飲み会を開いたりもしました。前回は百人ビール・マイスターとして特製名刺をもらえたのが嬉しかった。ちょっとした自慢のたねとして活用しています(笑)」

(男性)「大好きなビールをテーマにブログを書いているので、ブロガーとしてはネタとしてありがたい企画だし、こういう取り組みにはとても興味がある。前回に続いて今回も百人ビール・マイスターになれるように積極的に参加するつもりです。」

(女性)「今回初めて参加しましたが、(同じテーブルの)前回参加者の方に話を聞くにつれて、今後のプロジェクトが楽しみになりました。」

「前回のプロジェクトをWEBサイトで見て次があったら絶対参加したいと思って、友人を誘ってきました。」

「いつもはメーカーをあまり気にせずに飲んでいましたが、このブロジェクトに参加してからはサッポロビールを選んで飲んでいます。」

「今までは違うメーカーが贔屓だったのですが、このプロジェクトがとても楽しいので、サッポロビールのファンになりました。」

イベント会場では前回参加のコア・ファンと、今回初めて参加した人がプロジェクトへの展望を語りながら交流する場面も見られ、特別な時間を一緒に分かち合うリアル体験が、その後の参加熱意を高めることに作用したと考えられます。プロジェクト早期のイベント開催は、第一弾プロジェクトで熱心なサポーターとしてなった「コア・ファン」を軸に、新たなファンへ、プロジェクトへの愛着と共感を伝搬させていく起点となりました。

ゲーミフィケーションを取り入れ、参加意欲を刺激

このイベント後もプロジェクトでは引き続き、「アルコール度数」、「香り/香味」「苦味」「ネーミング」等の投票が行われていますが、4ヶ月に渡るプロジェクトが途中で盛り下がらないように、オウンドメディアに開設した特設サイトでは、参加度や貢献度に応じてポイントが貯まる仕組みを用意。参加意欲を高める工夫がされています

投票したりFacebookにシェアしたり、みんなの意見に「旨いね!」をしたり、とサイト上での活動に応じてポイントが貯まり、最終的に総合ポイント上位100名を、「百人ビール・マイスター」として認定。新ビール完成披露パーティーへ優先的に招待したり、百人ビール・マイスター限定のプレゼントを用意しています。

こうしたゲーミフィケーション要素が、参加者のモチベーションを高めて継続的な参加を増やし、参加者のアクションが新たなユーザーの参加を誘発するという、ソーシャルメディアの特性を生かしたプロジェクト活性化施策のポイントとなっています。

ビール好きが楽しめる“場”の提供を徹底的に考えたコミュニティ運営

「百人ビール・ラボ」の参加者心理を上手く盛り上げる施策について、サッポロビール株式会社 営業本部 企画推進部 デジタルマーケティング室シニアマネジャーの鈴木 雄一氏は、前回のプロジェクトでコミュニティ・マネージャーとして参加者との対話を重ね、エンゲージメントを深めていった経験が大きいといいます。

地方からの参加者にオフ会に誘われるほどになったという鈴木氏には、首都圏だけでなく地方のビールファンにも百人ビール・ラボの存在が広まっているという実感があり、地方のファンがもっとプロジェクトを楽しめるよう、リアルイベントのUSTREAM配信や、商品お披露目イベントの地方行脚も検討しているそうです。

プロジェクトでは先日、「百人のキセキ ~魅惑の黄金エール~」という商品名が決定し、現在最終ステップの「キャッチコピー投票」を開催中(http://100beer.sapporobeer.jp/

その後、11月28日で東京で「百人のキセキ~魅惑の黄金エール~」完成披露パーティーを開催する他、12月以降、大分、北海道、千葉、宮城、大阪、静岡でも、「百人のキセキ ~魅惑の黄金エール~」完成記念イベントを開催する予定となっています。

イベント詳細ページ https://100beer.sapporobeer.jp/

サッポログループは今年2月に発表した2013年-2014年経営計画の中で、「百人ビール・ラボ」を「新たな成長機会の創出」と位置づけました。これはサッポロビールに限らず、メーカー企業にとって生活者との“共創”が、経営にも大きな影響を与える、全社的に取り組んでいく必要がある企業活動になったことを意味しているのではないでしょうか。

サッポログループ経営計画2013年-2014年 ~新経営構想達成に向けた基盤確立と成果の創出~ http://www.sapporoholdings.jp/news_release/0000020117/

第一弾の成功を元に今回の第二弾で更に進化した「百人ビールラボ」プロジェクトによって、どんな「ビールの未来」が作られるのか、SMMLabでは12月の商品化まで引き続き注目していきたいと思います。

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