キヤノンは、同社が発売するユーザーの目の前にある現実の映像とデジタルデータをリアルタイムに融合するMRシステム「MREAL」の新製品として、手持ち型のディスプレイを搭載する「MR ハンドヘルドディスプレイ MREAL HH-A1」を12月中旬より発売(価格はオープン価格)すると発表した。これに先立ち、MREALについての記者説明会および製品体験会が開催されたので、今回は体験会の様子をレポートする。

MR ハンドヘルドディスプレイ MREAL HH-A1

そもそも「MR(Mixed Reality)」とは、キヤノンが独自に開発したヴァーチャル・リアルティ技術で、現実と仮想を違和感なく融合させることを目的としている。「MREAL」は、MRの技術を利用し、対応機器を装着したユーザーの目の前にある現実の空間にデジタルデータ上の物体(モックアップなど)を表示し、あたかも"実際にそこに在る"かのごとく見せるソリューションツールとなる。

MREALの技術を搭載する機器は、同社が2012年7月に発売した頭部装着型の「MR ヘッドマウントディスプレイ MREAL HM-A1」(HM-A1)に引き続き、HH-A1で2機種目となる。HH-A1は230mm×90mm×97mm、重量約490gという小型・軽量という特徴があり、同社ではショールームや展示会といった多人数が手渡しで利用する場所での利用が想定されている。

体験会はモックアップの実寸体験から始まった。HM-A1を装着した状態で発泡スチロール製のモックアップに目を向けると、モックアップではなく機械が表示された。これを実現するために、意外とアナログな技術が採用されている。具体的には、まず機械が描かれた3D CADデータを用紙に印刷してマーカーを作成し、モックアップに貼り付ける。次に、モックアップ上のマーカーをHM-A1ごしに見ると、HM-A1がマーカーを認識してその中に収録された機械のデータを現実空間に展開する。担当者によるとマーカーをモックアップのすべての側面に貼り付けることで、360度どこから見てもCADデータを認識して機械を表示できるという。

発泡スチロール上のモックアップに貼り付けられたマーカー

HM-A1を装着してマーカーを見ると、目前にはモックアップではなく機械が表示される

すべての側面にマーカーを貼っておけば、360度どこからでも見られる

続いて、HH-A1などを利用して地面に配置されたマーカーを認識して目の前に仮想の物体を表示させる体験。下の写真のように、何もない場所(実際は3D CADデータが)に大型プリンタ複合機やPCデスク、自動車が表示された。床などにマーカーを設置する場合は、割り当てられたキーやコントローラを使って仮想の物体を動かすこともできる。

部屋の床にマークが貼られている状態

HH-A1ごしに見ると、プリンタ複合機とPCデスクが表示された

手をかざせば仮想データと一緒に表示される

何もない場所にマークを1つ設置する

HH-A1ごしに見ると、本来部屋には入りきらない大きな自動車が表示される

もちろん、さまざまな角度から自動車を眺められる

なお、同社ではHH-A1の発売に合わせて、以前のソフトからリニューアルした「MREAL Platform MP-110」も発売する(価格はオープン)。同ソフトは、設置したマーカーをカメラの撮影範囲から外れにくいようにするなど、さまざまな機能が追加されている。