KDDI 代表取締役社長 田中 孝司氏

KDDIは10月28日、2014年3月期の第2四半期決算を発表した。これによると、連結業績で営業収益が2兆538億円、営業利益が3476億円と共に過去最高を記録。KDDI 代表取締役社長の田中 孝司氏は決算会見の中で、株主優待制度の導入やiPadの下取りプログラム適用などを明かした。

「どのセグメントも増収増益を記録した。特にパーソナルセグメントは好調な通信料収入に加え、J:COMの連結も好影響だった」と語り始めた田中氏は、前年同期比で1164億円の営業利益増加となったKDDIの好調ぶりをアピール。

「パーソナル」「バリュー」「ビジネス」「グローバル」の4セグメントで、いずれも前年同期比を大きく上回る増収増益を記録したが、通期予測は現在のところ据え置きだという。田中氏はその理由について「例年も3Q発表後の通期予測変更を行っている上、年末商戦が控えている。ドコモiPhoneの投入など足下の競争が厳しい状況」と話し、iPhoneの販売状況や年末商戦における販促費の上昇などの影響を考慮した上で通期目標の修正を行うとした。

収益の柱である通信料収入では、モバイルが8237億円で前年比5.7%増、固定では前年比96.9%増の3475億円を記録。固定セグメントは連結対象となったJ:COMの連結影響による増収が大部分を占めるが、「FTTHも好調で、J:COMを除いても10.6%の成長率」(田中氏)となった。

モバイルの一人あたり通信料(ARPU)は4180円と1Qの4110円より80円の改善。ただ、前年同期は4240円であったため、依然としてARPUの低下は止まっていない。この点について田中氏は「データARPUが非常に好調であり、13年2月の底値から持ち直している。4Qには前年比でプラスに持って行けるような改善を果たしている」とした。

実際に、データARPUでは、NTTドコモが0.8%、ソフトバンクモバイルが5.5%の前年比上昇率(両社ともに1Qの数字)である中、KDDIは14.0%の高い上昇率を記録。これは、KDDIのスマートフォン販売比率で、LTE端末が98%を占めるところによるものが大きい。なお、スマートフォンのユーザー浸透率は42%で、LTE浸透率も22%と急速に拡大している。

一方で、販促費の一部である通信料の値引き施策「毎月割」についても設定単価を前年比で20%抑えている。「前年の1750円から1400円に抑えており、着実にコントロールできている」(田中氏)とした。毎月割を抑えつつも、au解約率は業界最低水準をキープし、2Qは0.67%にとどまるという。ほかに、au純増数は前年比33.4%増の134万契約、MNP純増数も24カ月連続1位をキープしている。

固定通信事業へ目を向けると、携帯回線と固定回線をセットで契約することで通信料の割引を受けることができる「auスマートバリュー」が好調なこともあり、長年赤字だったauひかり事業は黒字転換を果たした。成長ドライバーであるFTTH全体の累計契約数は304万5000契約まで伸びており、通期では326万契約を目標としている。

成長要因の「auスマートバリュー」については、固定だけではなく、モバイルの契約数にも好影響を与えており、モバイル回線数を固定世帯数で割った「世帯内au契約数」は1.89にまで上昇。田中氏は「さまざまな統計データを見ると、最終的には1世帯あたり2.5契約まで行くのではないか」との見通しを示した。また、「スマートバリューは、都心の場合単身生活者も多く、固定回線の契約に不満を持つユーザーもいる。この秋から提供する『スマートバリュー mine(WiMAX2+対応ルーターとの契約で割引)』など全ての世帯をスマートバリューの対象へと拡大する」とし、さらなる利用者層の拡大にも自信を見せた。

最後に「auスマートパス」の説明では、会員数が9月期で799万人に達したことを説明。すでに800万人を突破しているが、会員規模だけではなく、付加価値ARPU(一人あたりの情報料)についても上昇しているという。「全体では280円だが、スマートフォンユーザーに限ると440円となり、スマートパスが大きな役割を果たしている」と田中氏は語り、今後もスマートパスのサービス拡充を行っていくとした。

なお、質疑応答で「auスマートパス」や関連サービスの「うたパス」「ブックパス」が強制契約であるという一部報道についての質問が行われた。これについて田中氏は「オプション改善を徹底していきたいと考えている。必須条件にするのは許されるものではないし、しっかりと(キャリアとして)販売店に指導していきたい」と答えた。

ほかに、決算に関する説明では、転換社債の早期償還を行うほか、株主優待の導入を発表した。株主優待は、個人株主比率がTOPIX Core 30銘柄との比較で低いことを憂慮。個人株主の拡大や満足度向上、ロイヤルカスタマー層拡大を狙った導入だという。優待の内容としては、au端末本体を購入する際に利用可能なクーポンを提供。例えば1単元(100株)を5年以上保有していた場合、1万円のクーポンを提供するとしている。

また、会見後の囲み取材で田中社長は、iPad Airの発売に合わせて「Wi-Fiモデルを含むiPadを下取りする」と明かした。