ARMは、車載エレクトロニクスなどの安全/制御統合アプリケーションに対応するリアルタイム組み込みプロセッサ向けに、新たなアーキテクチャ「ARMv8-R」の技術的詳細を公開したと発表した。

ARMv8-Rは、同社のCPUコア「Cortex-Rシリーズ」のリアルタイム・プロセッサに使用されている32ビットARMv7-Rアーキテクチャの伝統を受け継ぐ、ARMv8-Aアーキテクチャと相補的な関係にあるアーキテクチャで、従来のリアルタイム32ビット・プロセッサ・ソリューションに新しい機能を加えることで拡張し、機能性と性能を向上することで自動車における安全分野などの市場ニーズに応えることを可能にするものとなると同社では説明している。

特に、「ベアメタル」のハイパーバイザ・モードの導入により、プログラマはさまざまなオペレーティング・システム(OS)、アプリケーション、リアルタイム・タスクを1個のプロセッサで処理し、なおかつそれらを厳密に隔離することが可能となるため、ソフトウェアの統合と再利用が促進され、製品化期間の短縮と開発コストの削減を図ることが可能になるとする。

さらに、同アーキテクチャは、ソフトウェア・クオリティの全体的な向上を可能にし、モデル・ベースの自動コード生成など高度な組み込みプログラミング手法をサポートする見込みだという。

また、仮想メモリ・システムと保護メモリ・システムを同じプロセッサ上で共存させ、Linuxなどのメモリ管理を使用するOSと、リアルタイム・オペレーティング・システム(RTOS)を統合することが可能だとするほか、メモリ保護方式の改良によるコンテキストスイッチにかかる時間の短縮、ARM NEONアドバンストSIMD命令による画像信号処理タスクの改善、プログラム・コードやデータの破損を検出するCRC(巡回冗長検査)といったARMv8-Aアーキテクチャから引き継いだ命令セットなども搭載される予定としている。

なお、ARMv8-Rアーキテクチャに対するエコシステム・サポートは、米Green Hills Softwareの「INTEGRITY」、Mentor Graphicsの「Nucleus」、イーソルの「eT-Kernel」などのOS製品で予定されているほか、同社の設計エコシステム「DS-5」における同アーキテクチャのサポートも2014年3月に実施される予定だという。また、同アーキテクチャの仕様は、すでにライセンスの提供が可能となっており、これを実装したプロセッサもすでに開発が進められているという。