浜松ホトニクス(浜ホト)は10月24日、シェールガス・オイル掘削開発などの用途向けに、従来品比で耐振特性を1.7倍向上させた石油探査用ヘッドオン型光電子増倍管「R8874-01」を11月1日より発売すると発表した。
石油探査では、油田の位置や規模を知るために、放射能検層や電気検層、音波検層などの物理検層が行われており、さまざまなセンサを用いて地層の種類や密度などのデータを取得している。通常の石油探査では、ワイヤーライン検層により、地下に垂直に2000mから3000m掘削した後で、坑井に測定機器を降ろし、抗底から引き上げながら物理検層を行うが、近年、盛んに進められているシェールガス・オイルの掘削では、頁岩の地層に添って水平に掘削する必要があるため、掘削しながら地層を測定するMWD(Measurement While Drilling)が用いられている。
MWD技術は、掘削を行いながら方向を制御できるため油層評価を正確に行うことが可能だが、中でも比抵抗、孔隙率、音波速度、ガンマ線などの検層を組合せ、より精密に地層評価を行うことを可能とした「LWD(Logging While Drilling)技術」も活用されるようになってきた。
そうした技術において、光電子増倍管は、放射能検層の検出器として利用され、地層に含まれる微量の放射性物質の測定や、測定機器に装備した放射線源を使って自然ガンマ線スペクトル検層、中性子検層、密度検層などの孔隙率を測定するために用いられるが、MWDでは、掘削ドリルの近くに測定機器が配置されるため、高温や振動、衝撃などの耐環境に優れた光電子増倍管が求められていた。
同製品は、電極を固定するための金属を挟み込んだセラミック側管を使用することで、耐振特性を従来製品の1.7倍に向上させることに成功したほか、従来製品同様の高温環境においても雑音の少ない光電面と2次電子放出材料を用いることにより、地下約5000mにおける温度、+175℃で安定動作も実現している。
そのため、同社では同製品を用いることで、通常一回の掘削コストが数千万円掛かるといわれる石油探査において、掘削距離の延伸のみならず硬い岩盤の掘削が可能となるため、効率的な生産を実現できるようになると説明している。
また今後は、石油や天然ガスなどの地下資源掘削のための地質調査はもとより、耐環境性能を要求される航空、宇宙開発関連の付帯設備、環境モニター用としても販路を広げていく計画とするほか、さらに深く地下約5700mまで掘削が可能とされる、+200℃の高温に対応する製品開発も進めていく予定としている。