国立天文台は10月22日、ハワイ現地時間2013年10月19日・21日の未明に、日本時間11月29日に近日点を通過する予定で、その前後にはマイナス等級までの増光が期待される「アイソン彗星(C/2012S1)」の姿を、「中間赤外線」を用いてすばる望遠鏡が撮影に成功したことをと発表した(画像1)。成果は、東北大学の大坪貴文科学費准教授らを中心とする研究チームによるものだ。
今回のアイソン彗星の撮影には、「中間赤外線」が用いられた。中間赤外線は波長がおよそ5~40μmで、人間の目では見ることができない電磁波(光)だ。すでに世界各地でアイソン彗星の画像が撮影されているが、この波長でアイソン彗星の姿をはっきりととらえ、画像を公開したのは、すばる望遠鏡が世界初となる。
すばる望遠鏡が備える数々の装置の内、中間赤外線域で撮影できるのが、冷却中間赤外線分光撮像装置「COMICS」だ(画像2)。波長7.5~25μmの範囲における中間赤外線での観測が可能な装置である。ちなみに中間赤外線は湿度の高いところでは観測できないが、すばる望遠鏡が設置されているマウナケア山頂は空気が薄く乾いているため、中間赤外線による観測を行うことが可能だ。
観測当時、アイソン彗星の地球からの距離は約2.3億kmで、すでに火星の軌道よりは内側に入り、だいたい火星軌道と地球軌道の中間ぐらいまで来ている(画像3)。等級は、現在のところ9~10等ぐらい。天球上では、10月20日前後は、しし座のα星「レグルス」のそばに、火星と並ぶようにして位置している(画像4)。
今回撮影されたアイソン彗星は、中間赤外線でも尾を引いているようにも見える。中間赤外線では彗星がまき散らした塵(大きさが1μm以下の固体微粒子)などが明るく光ってると考えられ、今回の観測では分光スペクトルのデータも取得された。研究チーム(画像5)は今後、取得されたデータを詳細に解析し、彗星の塵の材質や量を詳しく調べ、アイソン彗星の起源と太陽系の成り立ちに迫る予定だ。
なお、アイソン彗星の11月の天球上における位置は、画像6の通り。また動画はアイソン彗星の軌道と位置を描いたアニメーションCG。現在、国立天文台はアイソン彗星の特設サイトをオープンしており、最新情報をチェックしたい人には同Webサイトがお勧めだ。
アイソン彗星の軌道と位置 |
アイソン彗星、現在のところ、予想される等級よりも低いという話もあり、マイナス等級どころか、1等星にも届かず、都会では肉眼で見るのが厳しい可能性も出てきているようだが、彗星は予想だにしない増光を見せる時もあるので、マイナス等級になることを期待しよう。