Analog Devices(ADI)は10月23日、通信基地局や防衛用無線機器などに求められるソフトウェア無線(SDR)アプリケーションの実現に向けたRFアジャイル・トランシーバIC「AD9361」を開発したことを発表した。

同製品は65nmプロセスを採用することで、70MHz~6GHzの周波数範囲に対応し、RFフロントエンドやフレキシブルなミクスドシグナルベースバンド回路、周波数シンセサイザ、ΣΔ型12ビットA/Dコンバータ(ADC)、ダイレクト・コンバージョン・レシーバをそれぞれ2個ずつ集積した1チップ無線システム。また、200kHz~56MHzまでのベースバンド帯域にも対応しており、SDR無線システムのBOMコストの低減が可能になると同社では説明している。

さらに、ダイレクト・コンバージョン・レシーバは、高いノイズフィギュアや直線性を備えているほか、各レシーバ・サブシステムには、自動利得制御、DCオフセット補正、クワドラチャ(I/Q)補正、およびデジタル・フィルタ機能が内蔵されており、デジタル・ベースバンド部での同様の処理を不要にすることが可能になるほか、外部からの利得制御が可能な高い柔軟性を持つマニュアル・ゲイン・モードも備えているという。

加えて、チャネル当たり2個の高ダイナミックレンジのADCにより、受信したI/Q信号をデジタイズし、それらを任意に構成可能なデシメーション・フィルタや128タップのFIRフィルタを通し、適切なサンプリングレートで12ビットの出力信号を生成することが可能なほか、トランスミッタにはローノイズで高い変調精度を実現可能なダイレクト・コンバージョンのアーキテクチャを採用しているという。

なお同社では、同製品の提供に併せてFPGAメザニンカード(FMC)のほか、ガーバ・ファイル、リファレンスプログラム、Linuxサンプルアプリケーションやドライバ、設計サポートパッケージなどの設計リソースの提供も進めて行くとしているほか、FMC関連ではXilinxおよびAvnetも開発キットの提供を行っていく予定としている。同製品ならびに対応FMCはすでに量産出荷を開始しており、単価はFMCが750ドル、AD9361が1000個受注時で175ドル(いずれも米国における参考価格)となっている。

ADIのRFアジャイル・トランシーバIC「AD9361」の概要

FMCとして提供がなされるほか、各種のソフトウェアなども提供される。また、Avnetからもラピッドタイピング開発キット(スライドでは高速開発キットと記載されているが、英文ではRapid Development Kitとのこと)として別の製品が提供される予定だという