九州大学(九大)は、リアムコンパクトと共同で開発した風力発電適地選定ソフトウェア「RIAM-COMPACT(Research Institute for Applied Mechanics, Kyushu University, COMputational Prediction of Airflow over Complex Terrain)」を用いて、風力発電産業の企業集積が急速に進んでいる北九州市響灘地区を対象とした、局所的な風の流れの見える化を実施し、風の流れの時間的・空間的な変動が響灘地区およびその周辺海域にまで及んでいるとの結論を得たと発表した。

同成果は、同大応用力学研究所の内田孝紀 准教授によるもの。北九州市から都市計画調査データの提供を受け、計算格子データの作成に関しては、環境GIS研究所および西日本技術開発が協力する形で実施された。

北九州市響灘地区は現在、風力発電産業のアジア総合拠点として企業集積が進められている地区で、2003年3月より運転を開始した「響灘風力発電所」をはじめ多数の風車が稼動しており、2013年6月には、響灘沖に洋上風力発電設備も設置されるなど、国内の風力発電産業における拠点の1つとなっている。

今回の研究では、RIAM-COMPACTを用いて、北九州市響灘地区の局所的な風の流れの見える化に挑んだ。はじめに2011年~2012年における気象庁配信の気象GPVデータを解析したところ、響灘地区には北西および南東の風が年間を通じて卓越して吹いており、かつ北西および南東の風の発生頻度もほぼ同程度であることが確認された。

左が北九州響灘地区(図中の点線)の周辺地勢。右は気象GPVデータの解析結果。地上10m、赤線:平均風速(m/s)、青線:出現頻度(%)

これは、海からの風と陸からの風が同じような頻度で吹いていることを示しており、北西寄りの風が吹いている状態では、響灘沖に位置する白島(男島・女島)などの小離島の影響を受けた風が、また南から南東寄りの風が吹いている場合には、響灘地区の南側に位置する石峰山(標高302m)や、響灘地区内外の地上構造物などの影響を受けた風が発生することを示すものであり、この結果を加味する形でRIAM-COMPACTを用いて、北西、南、南東の風の流れをコンピュータ上に再現し、局地的、局所的な風の流れの時間的・空間的な変動の見える化を実施したところ、それらの風の流れの時間的・空間的な変動が響灘地区およびその周辺海域にまで及んでいるとの結論を得るにいたったという。

シミュレーション結果、風向:北西、主流方向風速の分布図、赤色ほど風速が大きいことを意味する

シミュレーション結果、風向:南、主流方向風速の分布図、赤色ほど風速が大きいことを意味する

シミュレーション結果、風向:南東、主流方向風速の分布図、赤色ほど風速が大きいことを意味する

なお内田准教授は、今回の成果をさらに高精度化(具体的には、最新の建物形状データの入力など)することで、北九州市響灘地区を含む陸域および海域を対象にした高解像度・局所風況マップの作成が可能になるとしており、そのデータを活用することで、既存風車や新規の(洋上および陸上)風車建設のための風況診断・乱流診断などが可能になるほか、響灘沖を運行する船舶に対して、周辺の地形や地物の影響など考慮した局所風を検討する指針としての活用も期待できるとコメントしている。