KDDIは、10月10日に提供開始を発表したクラウドサービス「Office 365 with KDDI」「Google Apps for Business」におけるアドオンツール提供と、クラウドセット割引キャンペーンの開始を17日、発表した。いずれも11月1日より提供する。
Office 365 with KDDIのアドオンツールはネクストセットが提供。一方、Google Apps for Businessのアドオンツールは、サテライトオフィスが提供を行う。両社は以前よりそれぞれのプラットフォームに対するアドオンツールの提供と導入支援を行っており、ワークスタイルの変革を強力に支援するとしている。
Office 365 with KDDI向けの「KDDI ネクストセットツール」では、「組織ワークフロー」と「SSO(シングルサインオン)」を提供。また、Google Apps for Business向けの「KDDI サテライトオフィスツール」では、同じく「組織ワークフロー」ツールと「SSO(シングルサインオン)」ツールが提供されるほか、「組織アドレス帳」も提供される。KDDI ネクストセットツール向けにも組織アドレス帳は今後提供される予定。
いずれの機能も個別にID単位で課金される。月額料金は1 IDあたり105円。
また、「スマートバリュー for Business」で「クラウドセット割引キャンペーン」が11月1日~2014年3月31日までの期間限定で受付が行われる。
このキャンペーンは「Office 365 with KDDIかGoogle Apps for Businessとauスマートデバイスをセットで契約する法人ユーザーを対象に、auスマートデバイスの毎月の利用料金から最大2年間525円を割り引くというもの。
通常のスマートバリュー for Businessでは、固定通信サービスの契約もセットとなっているが、固定通信サービスを対象から外した理由についてKDDI サービス企画本部 クラウドサービス 企画開発部長の藤井 彰人氏は「最近固定回線を引いた企業など簡単に移行できない法人ユーザーへの措置。また、525円の割引によって、Office 365の契約形態によってはコストが月額100円程度に抑えられ、Google Appsでは実質的に無料でクラウドサービスを利用できる。新しいワークスタイルを導入していただくためにも、今回のキャンペーンを行った」と語った。
質疑応答では、「ソフトバンクがGoogle Apps for Businessの取り扱いで先行している点についてどのように考えているか」との質問があり、藤井氏は「以前より導入支援を行っているサテライトオフィスとの業務提携を行うことで、サポート体制も万全。それに加えて、スマートバリューによる料金体系の優位性もあると考えている」との見解を示した。
クラウドサービスの成長はまだ始まったばかり
KDDIがクラウドベースのグループウェアで2強とも言うべきOffice 365 with KDDIとGoogle Apps for Businessの同時提供に踏み切った狙いはどこにあるのか。
先ほどの藤井氏と、同社 ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部 事業企画部で副部長を務める中馬 和彦氏にお話を伺った。
「ある調査でクラウドの導入検討率は7割を超えていると出ており、法人クラウドサービスの国内市場成長率は年率32%に達する。世界市場においては、スマートデバイスの出荷台数はPCに対して4倍にも及ぶという。『モバイル・ファースト、クラウド・ファースト』とこの2つは重要なキーワード」と語る藤井氏は、その一方でまだまだクラウドサービスの導入率が低い現状を訴える。
「いわゆるグループウェアを利用している企業は、全体の半分でしかいない。そのうち、SaaS型のクラウドサービスを利用している企業はごく一部。コンシューマーサイドではGmailをはじめとしたクラウドサービスが浸透しているのに、企業はまだ生かせていない。私は今回の発表を通してクラウドのインパクトを法人ユーザーへ届けたいと思っている」(藤井氏)
法人クラウドサービスの高い市場成長率は、元々の利用企業数が低い上に成り立っていることを明かした上で、KDDIがOffice 365とGoogle Apps for Businessの双方を提供する理由を藤井氏は「3M戦略のマルチユース、とりわけスマートパス構想の法人版と思ってもらうとわかりやすい」と話す。
「これまでオンプレミスでグループウェアを利用してきた法人などは、どうしても一気にクラウドサービスへ移行するといった施策はとりづらい。そういったときに『こっちのクラウドサービスを利用したい』『こっちのクラウドサービスの方が、既存システムとの親和性が高い』と“選べる自由”があった方がいい。KDDIが提供する料金体系の中でサービスを選択できる」(藤井氏)という点でスマートパスに近い感覚でクラウドサービスの導入ができるのだという。
デバイス、回線、サービスの3M戦略は法人でも強みに
KDDIは、これまでも自社で「KDDI Knowledge Suite」や「ファイルストレージ」といったクラウドサービスを提供してきた。マイクロソフトやGoogleのクラウドサービスを導入することで、今後フェードアウトしてしまうのだろうか?
「さきほどのお話の通り、元々クラウドサービスを導入している企業が少なかった。iPhoneやGalaxyといったスマートフォンを思い浮かべてもらうとわかりやすいが、私たちはお客様にとって使いやすい、より良いサービスを取り揃えることが重要だと思っている。自分たちのサービスは今後も続けていくし、お客様のニーズによって新たに提供するサービスと組み合わせてご提案することもある」(中馬氏)
また、急速にスマートデバイスの普及が進む中で、企業規模を問わずクラウドサービスの導入が行われているという。
「中小企業の方がフットワークが軽い分、クラウドサービスをコンシューマーサービスと同様の感覚で使えるとのことで導入しているケースも多かったが、最近は大企業も導入が加速している。コンシューマーサービスと似ているユーザーインタフェースを持つクラウドサービスを導入すると、一般社員でも使い方を説明しなくても使ってくれる。だから、これまでヘルプデスク作業に追われていたシステム部門の負担が減る」(中馬氏)
最後に、KDDIが提供する包括サービスの強みを藤井氏が改めて語ってくれた。
「スマートデバイスが普及、進化するにつれて、モバイルファーストではなく、モバイルオンリーといってもいいほどにサービス、回線を強化していきたい。これは、デバイス、回線、サービスをまとめて提供できるKDDI最大の強み。サービス部門は複数のクラウドサービスを扱うことで、それぞれの企業に合わせた最適なソリューションを提供できる。クラウドは、ユーザーが何もしなくても日々進化していくし、我々も頑張っていきたい」