北海道大学(北大)は10月15日、タナイス目に属する小型甲殻類の研究から軟甲綱としては初めてとなる自家受精種を発見したことを発表した。
同成果は、同大 理学部 生物科学科 多様性生物学講座I所属の角井敬知 博士、同 多様性生物学講座IIIの卒業生である蛭田千鶴江 博士らによるもの。詳細は総合学術誌「Naturwissenschaften」に掲載された。
自家受精は、同時的雌雄同体(体内にオスとメスの生殖器官を同時に持った状態)の個体が、自身の精子と卵を受精させる生殖様式で、甲殻類ではこれまでカブトエビ類(鰓脚綱)やフジツボ類(蔓脚綱)に存在していることが知られているが、エビやカニ、シャコ、ワラジムシといった、一般にも馴染みのある動物が含まれる2万2000種類からなる甲殻類最大のグループである軟甲綱からは、これまで自家受精種は報告されていなかった。
タナイスも軟甲綱に含まれる動物で、今回の研究では、研究グループが名古屋港水族館で見つけた同時的雌雄同体のタナイスの一種に対し、走査型電子顕微鏡を用いた外部形態の観察、組織切片の観察による内部形態の観察、単離・継代飼育、卵発生過程における染色体動態の観察などを行って生殖様式を調査。その結果、同タナイスが単独で子孫を残すことが出来ること、その際、自家受精を行っていることを確認したという。
なお、今回の成果について研究グループでは、タナイス類の生殖様式の多様性の一端を明らかにするものであると同時に、造雄腺ホルモンにより調節される軟甲綱の性分化機構の理解に役立つことが期待されるとコメントしている。