2013年10月8日に発表されたノーベル賞物理学賞は、「素粒子の質量の起源に関する機構の理論的発見」を受賞理由にエディンバラ大学名誉教授のPeter W. Higgs氏、ブリュッセル自由大学のFrancois Englert氏の2名が受賞した。
今回の受賞の決め手となった要因の1つに2012年7月に、欧州合同原子核研究機関(CERN)の最高エネルギーで陽子同士を衝突させる大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の2つの国際共同実験グループ「アトラス(ATLAS)」と「CMS」による新粒子の発見がある。この粒子は、その後の精査の結果、スカラー粒子であることがほぼ確定し、ヒッグス粒子の発見とされた。
この実験研究に用いられたLHCは、周長27kmのトンネルの中を時計回りと反時計回りに陽子ビームが回り、4カ所で衝突させることで新たな粒子の探索などを行っていたが、周回しているビームを衝突点で収束し、高い輝度での衝突を可能にするための装置であるビーム収束用超伝導四極磁石の開発建設は、米国フェルミ国立加速器研究所と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が協力して行ったほか、加速器の建設には古河電気工業、IHI、浜松ホトニクスなどの技術が活用されている。
また、実験研究そのものにもアトラス実験には高エネルギー加速器研究機構(KEK)、筑波大学、東京大学、早稲田大学、東京工業大学、首都大学東京、信州大学、名古屋大学、京都大学、京都教育大学、大阪大学、神戸大学、岡山大学、広島工業大学、九州大学、長崎総合科学大学といった大学から研究者が参加し、ヒッグス粒子発見に向けた取り組みが続けられてきた。
なお、東京大学 大学院 理学系研究科・理学部のWebサイトでは、今回のノーベル賞受賞に際し、東京大学理学系研究科が監修し、学研教育出版が発行している大人の科学マガジン サイエンス・ライブ「ヒッグス粒子」の一部を紹介し、ヒッグス粒子とは何であるか、その発見の意義、ATLAS実験の概要などを読むことが可能となっている。今回のノーベル物理学賞発表でヒッグス粒子が気になった人は一度読んでみると良いだろう。