KDDI研究所と三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)は10月8日、ユーザ(コンテンツ購入者)ごとに異なる電子透かしを埋め込んだ動画コンテンツを、高速に生成する技術を発表した。

同技術を利用すると10分の電子透かし入り動画コンテンツ(7Mbps、約500MB)を約2秒で生成でき、実用レベルまで高速化を果たしたとしている。動画コンテンツ配信サービスなどに活用することで、配信された動画が違法アップロードされた際に、電子透かしによって違法配信者を特定できるようになる。

同技術を利用することで違法流通の抑制を狙う

技術の詳細な内容では、1つのコンテンツに対して異なる電子透かしを埋め込むほか、エンコード処理した動画コンテンツをあらかじめ数種類用意しておいて、配信時にユーザ情報に基づいてコンテンツファイルを抽出、再結合して配信する。

動画のエンコード処理では前後フレームとの差分を利用するため、単純に任意のフレームで抽出・結合をすると絵が崩れたり劣化したりするが、新技術ではエンコード処理や抽出・結合を適切に行うことで、この問題を解決することに成功した。

さらに、動画全体がなくても一部の動画データからユーザー情報を取り出せるようにするため、フレームに埋め込む情報量や再結合前に抽出する動画データ量などにチューニングを施している。結果として、数十秒~数分程度の動画があればユーザーが特定可能なレベルに最適化することができた。

本技術開発に使用した映像用電子透かしはMDISで製品化したものであり、動画コンテンツに各種加工を行っても電子透かしの情報を読み出すことができる耐性を備えている。また、電子透かし埋め込みによる画素の変化は、人間が認識できないほど軽微であるという。

技術イメージ

今後は、動画コンテンツ配信事業者向けのサービスとして早期商用化を目指すとともに、さらなる高速生成化の実現を目指すとしている。

コンテンツサービス市場の拡大に伴い、動画コンテンツの流通が急速に進む反面、インターネット上での動画コンテンツの違法流通が拡大している。

このため各サービス事業者は、自社の暗号化/復号技術と再生用アプリを用いてコンテンツを保護するDRMや、動画ファイルに著作権情報やユーザ情報を埋め込む電子透かしといった技術で違法流通を抑止している。

しかし、DRMは独自コンテンツ保護技術の開発と維持にコストがかかり、電子透かしはユーザ情報の埋め込みおよびその後のエンコード処理に時間(動画コンテンツの実時間程度)がかかるため、ユーザの配信要求ごとに電子透かしを埋め込むことは困難だった。