今年8月1日付でチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ(以下、チェックポイント)の代表取締役社長に就任した本富顕弘(ほんぷ あきひろ)氏。次世代ファイアウォール、サンドボックス型脅威対策、UTM(統合脅威管理)、IPS(不正侵入防御システム)など、セキュリティソリューション・ベンダーはまさに群雄割拠の状況にあるなか、本富氏率いる新生チェックポイントはどのような方向に進もうとしているのか。日本市場における新戦略を含めて話を聞いた。

ファイアウォールベンダーから総合セキュリティベンダーへ

──社長就任後一月以上が経ちましたが、内側からチェックポイントを見ての印象はどうですか。

チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ 代表取締役社長 本富顕弘氏

やはり、インターネットセキュリティに特化して、そこで全方位的にソリューションを展開しているベンダーだなという印象を持ちましたね。それとともに、日本のお客様やパートナー、社内のメンバーと対話していくことで、チェックポイントの生生しい状況がわかってきました。これらの内容を踏まえて、新しいプログラムを積極的に展開するために、いままさにパートナーを巻き込んでいろいろと動き出そうとしているところです。

当社はグローバルでの売上が1300億円以上あり、継続して成長を続けていますが、日本の状況は少し異なります。だからこそ、グローバルでの戦略に合わせると同時に、日本独自の戦略も展開しなければならないのです。

──現在描いている新戦略とは具体的にどのようなものでしょうか。

当社は20年前にファイアウォールを全世界の市場に送り出したこともあり、世間からはファイアウォールベンダーというイメージを持たれています。特に日本市場においてその傾向が強いのではないでしょうか。実際、ファイアウォールのビジネスで大きな成功を収めていますので、そうした印象を持たれるのも無理のないことなのかもしれません。

しかし、当社は現在、次世代ファイアウォール(Next Generation Firewall)やUTMなどでも様々な調査会社からリーディングカンパニーとして評価されています。チェックポイントはもはやファイアウォールベンダーではなく、総合セキュリティベンダーなのだ、ということを強くアピールしていかねばなりませんね。

そのためにも、次世代ファイアウォールを実現していくための核となるSoftware Bladeにさらに注力するとともに、新たに日本市場でもマネージドセキュリティサービス(MSS)を展開していくつもりです。セキュリティアプライアンスとSoftware Bladeという現在のビジネスの基盤に、もう1つサービスが加わることで、これまで以上にお客様のニーズに合わせたセキュリティを包括的に届けていく構えです。

中堅中小企業市場進出の切り札、マネージドセキュリティサービス

──MSSは欧米では既に手がけていますが、日本市場での特徴はありますか。

これまで当社が得意としていたエンタープライズ市場だけでなく、中堅中小企業市場によりフォーカスしていくのが特徴となっています。実はサイバー攻撃者から見ると中堅中小企業というのは"宝の山"なんです。価値の高い情報をたくさん持っているのにセキュリティは甘いのですから。よく言われるように、大企業への攻撃の踏み台としても攻撃を受けやすいですし。そうした中堅中小企業に対しても、パートナーと協力しながらMSSを提供し、お客様には安心して自社のビジネスに専念してもらいたいのです。マネージドサービスプロバイダ向けのMSSは、日本市場におけるビジネスの柱に成長できると期待しています。

また、アプリケーションの制御についても日本独自の仕様を取り入れる予定です。もはやセキュリティソリューションが守るべき領域は、従来の物理レイヤのみならず、より上位のレイヤにまで拡大してきています。なかでも特に重要なのがアプリケーションレベルでの防御でしょう。そこでこれから力を入れようとしているのが、日本のアプリケーション事情に配慮したSoftware Blade、アプリケーションコントロールなのです。

会社のポリシーに基づいたきめ細やかなアプリケーションコントロールを実現するためには、業務に直接関係のないミクシィやグリーといったコミュニケーションツールや2ちゃんのような掲示板サービスなど、日本ならではの個人用アプリケーションを会社のネットワークではどう制御するかを考え、実行することが必要になります。そこでお客様のニーズに合わせて、このアプリに関してはこう制御した方がいいのでは、といったところまでアドバイスできるような仕組みを現在構築中です。

──他に、今後予定している取り組みなどがあればお聞かせください。

いろいろとありますが、欧米では既に手がけているセキュリティアプライアンスのレンタルを日本市場でも展開していく予定です。企業が使用するネットワーク帯域は年々増加していますので、同じアプライアンスが3年後、5年後も使えるかどうかは疑問です。そこで、アプライアンスをレンタルすることで、容易にアップグレードできる仕組みが重要になると見ています。アプライアンスは財務会計上資産として計上しなければなりませんが、レンタルであればアセットレスにすることができますしね。

──最後に、日本のユーザー企業やパートナーに向けたメッセージをお願いします。

チェックポイントのセキュリティソリューションは、エンドポイントからゲートウェイ、ハイエンドからエントリーと多様です。それに加えて、クラウド、仮想化、モバイルといった分野への進出を強化していくことで、新しい事業ドメインの確立を目指しています。

そうしたなかで、各分野のパートナーが得意とするソリューションと一緒にバンドルして、お客様のニーズに合ったセキュリティソリューションを創出するような仕組みづくりを積極的にやっていきますので、ぜひ期待していただきたいですね。