岩谷産業は10月2日、電場(電界)を利用した空間除電システムを開発したと発表した。
同技術は、これまでのワークに帯びる静電気を除去するという概念ではなく、作業空間自体を、静電気を発生させない空間にするという画期的なものという。空間に漂うほこり(パーティクル)に帯電する電荷を中和除去し、半導体や太陽光パネル、液晶ディスプレイなどの製造工程で、ウェハやガラス基板上に静電付着するほこりを大幅に低減できるとともに、クリーンルームのランニングコストも大きく低減できるとしている。
空気中に漂うパーティクルは、通常正負のどちらかに帯電して静電気を帯びているが、製造現場では、ワークの帯電状態と相まって、このほこりが電気的に静電吸着しやすくなっており、どの現場でもその対策に苦慮している。従来は、イオナイザと呼ばれるようなコロナ放電にて大量のイオンを作り、送風してワークに吹き付けることによって、ワーク自体の帯電を中和除去する局部除電が主流だった。今回開発した除電技術は、ワークを対象にするのではなく、作業空間に着目したもの。強い電界を発生させて空気中に大量のイオンを生成し、そのイオンにより空間を漂うほこり自体の静電気を除去する空間除電という発想に基づいた技術である。
システムは、電界を発生させるワイヤ電極、ワイヤ電極に電圧を印加する電圧印加器を基本構成としている。正負の極性を持つワイヤ電極を一対として、除電する部屋の天井部に複数組を配設して電界を発生させることで、ワイヤ直下の空間を除電することが可能になる。具体的には、交流100Vを直流10kVに昇圧し、電界を放出する+/-の高電圧ワイヤをそれぞれ室内に張る。そして、数秒から数十秒間隔で+/-を交互に切り替えることにより、正負のイオンを空間に満遍なく大量に発生させることができる。10kVと高圧だが、電流はほとんど流れないため安全である。電界はWHOの公式見解でも、人体にも影響は与えないとされているという。
この除電空間において、帯電した空中浮遊パーティクルを中性化する。その結果、沈降しやすくなり浮遊粉塵量の低減効果をもたらす。この粉塵がSiウェハやガラス基板などに落下しても静電吸着しない。また、低湿度でも除電が可能なため、クリーンルームなどで過大なエネルギーを投じて行われている湿度コントロールが不要になることも大きなメリットだとしている。