大学図書館にある日本語学術書の電子化を進めるために、慶應義塾大学や東京大学などの8大学は、電子書籍の活用に関する総合的な合同実験11日から始めた。専用アプリを搭載したタブレット型端末をモニターに貸し出し、読みたい電子書籍や“電子教科書”などの調査、検索に必要なデータの作成や流通システムの検討などを、3カ月間かけて行う。
参加するのは慶應義塾大学と東京大学、名古屋大学、大阪大学、神戸大学、奈良先端科学技術大学院大学、福井大学、立命館大学。このうち慶應義塾大学のメディアセンター(図書館)は2010、11年度に「電子学術書利用実験プロジェクト」として、大学図書館における電子書籍の有効性について検証してきた。12年度からは他大学にも参加を呼び掛けて、「大学図書館電子学術書共同利用実験」に取り組んだ。今回の8大学合同の実証実験により、大学図書館に共通する“電子書籍の利用イメージ”を明らかにするという。
合同実験の内容は大きく4点。
8大学合同モニター調査:専用アプリが搭載されたiPadなどのデバイスを、各大学10-20人のモニターに貸し出し、電子書籍の利用分析、専用アプリの評価、読みたい電子書籍の調査、デバイスによる利用法の違いなどを調べる。
ナビゲーション・システムの検討:電子資料やネット上での情報源を検索する商用ディスカバリー・ツールを使い、読みたい電子書籍の“発見”に必要な検索データの作成、手にするまでの流通やナビゲーションなどのシステムを検討する。
大規模コンテンツ調査:読みたい書籍(コンテンツ)、電子化を望む書籍を明らかにするため、図書館資料の貸出ログ分析、モニター調査での質問や聞き取りなどを行う。
電子教科書の提供・利用実験:幾つかの大学に限定して電子教科書を提供し、紙の教科書との使い方の違い、授業での利用に必要なサービスや機能の評価、理想の教科書像などを調査する。授業の変化に対応した“新しい教科書モデル”として、電子書籍が担う役割や可能性についての検討も期待される。
実験幹事校の慶應義塾大学によると、電子書籍について海外では、数百万から1,000万点規模の学術書が画面上で利用できる大学図書館がある。日本では大学図書館が必要とする日本語学術書の電子化は進んでいない。同大学のこれまでの実験で、電子書籍は「1冊の通読よりも、部分利用に向いている」「紙の書籍とでは、利用する目的や場面で使い分けが起こる」といった断片的なイメージが得られているという。
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