住友電気工業(住友電工)は10月1日、室温で動作し、サイクル寿命を改善した溶融塩電解液電池の開発に成功したと発表した。
詳細は、10月7日から開催される「第54回電池討論会」にて報告される予定。
融塩電解液電池は、電解液に溶融塩(イオン液体)のみを使用した2次電池であり、資源量が豊富で比較的高いエネルギー密度が期待できるナトリウム酸化物を正極活物質に、難燃性である溶融塩を電解液に用いている。
同社は、2011年に京都大学 エネルギー科学研究科 萩原研究室と共同で、57℃という低融点の溶融塩(NaFSAとKFSAの混合物)を開発し、高エネルギー密度で、他の2次電池と比べて動作温度領域が57℃~190℃と広い溶融塩電解液電池の開発に成功した。以降、2015年の製品化に向けて、信頼性・安全性の評価、生産技術の開発を進めるとともに、京都大学と共同で、より低温で動作可能な溶融塩の探索や電池の改良に取り組んできた。
今回開発した溶融塩電解液電池では、融点がより低温でありながら電解液に適した溶融塩(NaFSAとC1C3pyrFSAの化合物)を採用した結果、20℃~90℃という室温を含む広い温度領域で動作が可能となった。一般的なリチウムイオン電池や鉛電池と比べて高温域で広いため、排熱のためのスペースが不要で組電池とした場合の小型化が可能。また、従来の電池を高温環境で使用する場合には電池を空調などで冷却することが一般的だったが、開発した電池は冷却の必要がなく、電池システムとしてのエネルギー効率が優れると期待される。さらに、溶融塩を含む電池材料が難燃性を有するため、火災や機器異常の際の安全性に優れている。また、採用した溶融塩が化学的に非常に安定であり、電池の動作電圧の範囲で分解反応が起こらないため、満充電、完全放電を繰り返すような過酷な条件下で使用した場合でも、優れたサイクル寿命特性を有している。
バックアップ電源用の2次電池は、満充電付近の一定電圧が加えられ続けるフロート充電の状態で使用されるが、長時間使用すると電池容量が低下することが知られている。今回開発した溶融塩電解液電池は、一般的なリチウムイオン電池と比べて、フロート充電における使用時においても優れた寿命特性を示している。また、充電状態で保管した場合、一般的な電池では自己放電により容量が徐々に低下するが、開発した電池は自己放電をほとんど示さず、優れた保存特性を示すとしている。