東レは10月1日、次世代パワー半導体として期待されているSiCのイオン注入工程を簡略化できる感光性耐熱レジストを開発したと発表した。

通常SiCデバイスの製造工程では、SiCウェハ上にアルミなどのイオンをマスクを介して注入することで電気特性を制御するための回路パターンを形成しているが、従来のSi半導体では行っていなかった300℃以上の高温でイオン注入を行うために、回路以外の部分のマスク材料として、高耐熱性を有するCVD(化学気相蒸着)法による二酸化珪素などの無機物の層と、フォトレジスト樹脂の二層が必要となっており、フォト加工、エッチング、レジスト剥離、イオン注入、マスク除去といった一連の加工工程を繰り返し行う中で高コストになってしまうという課題があった。

同レジストは、一般的なフォトリソグラフィ加工により2μm以下のファインパターンの形成が可能で、イオン注入時の300℃以上に対する耐熱性、ウェハへのイオン阻止性能を有し、かつ、イオン注入処理後に薬液での除去性能を保有しており、マスク材料並みの耐熱性があるため一層の塗布で直接パターニングが可能となるためプロセスの簡略化が可能だという。

現在、産業技術総合研究所、富士電機、アルバックと共同で、高温イオン注入レジスト材料として適用した簡略化プロセスによるデバイス製作の実証検証を行っているとのことで、すでに代表的なパワー半導体である1200Vショットキー・バリア・ダイオードデバイス(SBD)の作製について、フォト加工プロセス、イオン注入プロセス、マスク剥離プロセスの最適化により、従来の無機酸化膜と同等レベルの電気特性を得ることができることが確認されているという。

なお、同社では今後、SBDで得られた知見を生かして、MOSFETデバイスを製作する実証検証を行っていく計画としている。