フィリップス エレクトロニクス ジャパンは9月30日、前立腺がんの生検をMRI装置のガイドのもと行う新システム「DynaCAD」の販売を11月1日より開始すると発表した。

前立腺生検は、前立腺がんが疑われるときに行なわれる検査で、従来は診断確定のために超音波ガイド(超音波診断装置の画像を見ながら病変部の位置を見極めること)を用いて、前立腺に針を複数刺して疑わしい組織を採取し、がん細胞の有無を調べる手法が用いられていたが、同システムは、そうした従来の生検方法を用いて検出されなかった場合に用いられる再生検向けシステムとなっている。

MRIガイド下(MRI画像を見ながら病変部の位置を見極めること)生検により、高コントラストで撮像されたMRI画像を用いてリアルタイムにバイオプシーシミュレーション(病変までの距離、角度など)を行うことが可能なため、病変部を的確に捉えることができるという。

また、同手法の実現のために同社ではMRI対応(非磁性体)の針を独自に開発、強い磁気を発生しているMRI装置内での歪みを軽減し、病変部に針が到達している様子の画像化も可能としており、これにより従来法生検で検出が難しかった部位の前立腺がんの採取・診断も可能としたという。

なお、同システムは2013年7月から熊本中央病院にて臨床評価が行われており、すでに期待を上回る臨床結果を得ることに成功しており、実際に使用した熊本中央病院 放射線診断科の片平和博 部長は「従来の生検手法ではがん細胞を検出することが困難であった患者に、1回の検査だけで病変部を採取することに成功した」としており、これにより今後確実に増えることが予測されている前立腺がん診療に対する医療の質を高めることが可能になるとコメントしている。

なお、同システムの希望販売価格は4000万円から(仕様によって変化)となっており、主に前立腺がんの手術件数が多い基幹病院などに初年度で約20台の導入を見込むとしているほか、同システムは既存のフィリップス製MRI装置にも取り付けが可能であるため、導入コストを抑えることも可能になると説明している。

「DynaCAD」のシミュレーション画像

「DynaCAD」の生検用固定具