富士フイルムとImecは9月26日、サブミクロンオーダーのパターン形成が可能な有機半導体用フォトレジスト技術を開発したと発表した。

有機半導体は、シリコンなどの無機半導体と比ベて、軽量、大面積、フレキシブルが可能などの特徴から、有機太陽電池やフレキシブルディスプレイ、センサなどの用途で期待されており、近年、研究開発が活発化している。現在、有機半導体を生産するためのパターニング方法として、シャドーマスク法やインクジェット印刷法などがあるが、これらの方式は大型基板上で高解像度にパターニングすることが困難という課題がある。一方、シリコン半導体のパターニングに採用されているフォトリソグラフィ方式は、大型基板上での高解像パターニングが可能だが、有機半導体を生産する場合、フォトレジストが有機半導体材料を溶解してしまうという問題があった。

今回、富士フイルムとImecは、有機半導体材料にダメージを与えず、大型基板上でサブミクロンオーダーのパターン形成を可能にする新フォトレジスト技術を開発した。新技術は、富士フイルムの有機化学合成技術を駆使して材料設計したフォトレジストに、富士フイルムとImecの半導体プロセス技術を融合させて構築したものという。既存のi線露光装置を使用でき、新たな設備投資が不要であるため、コスト効果に優れた高解像の有機半導体デバイスの製造に貢献できるとしている。

また、技術検証のため、新技術を用いて有機フォトディテクタ(OPD)および有機発光ダイオード(OLED)を作製し、その動作を実証した。有機半導体材料をパターニングして、300μm×300μmサイズの微細な受光素子を形成したOPDを作製。一般的に有機半導体材料にパターニングすると、光を電気に変換する特性(光電変換特性)が劣化するが、今回作製したOPDはパターニングしても劣化がなく、動作することを確認した。また、OLEDでは、有機半導体材料をパターニングして、20μmピッチの発光素子を形成し、均一な発光を得られることが確認できたという。

有機半導体材料をパターニングして300μm×300μmサイズのOPDを作成し、擬似太陽光(AM1.5G)を照射した際の光電変換特性(赤点線)を調べた。有機半導体材料にパターニングしない場合の光電変換特性(赤実線)と比較したところ、両者に差はなく、パターニングによる劣化はなかった。また、未照射時の暗電流においても同様に、パターンあり(黒点線)、パターンなし(黒実線)で差はなかった

蒸着した低分子有機半導体材料を新フォトレジスト技術でパターニングして、直径15μmのドットを20μmピッチで形成し、各ドットが均一に発光することを確認した