産業技術総合研究所(産総研)は9月26日、基板サイズ3cm×2cmのCIGS太陽電池サブモジュールで変換効率18.34%を達成したと発表した。
同成果は、同所 太陽光発電工学研究センター 先端産業プロセス・高効率化チームの柴田肇研究チーム長、上川由紀子産総研特別研究員、小牧弘典研究員らによるもの。
CIGS太陽電池は、2μm程度の薄い光吸収層で十分な光吸収が得られること、基板には安価なガラスや金属薄膜などが利用可能などのメリットから、低コストかつ高い変換効率が得られる太陽電池として注目されている。また、最近では、生産ラインにおいて製造されたモジュール(125.7cm×97.7cm2)で変換効率14.6%が達成されるなど、量産レベルでの太陽電池モジュールでも変換効率が向上している。一般的に、太陽電池モジュールの変換効率(世界最高効率:15.7%)は小面積単一セル(世界最高効率:20.4%)と比べると低くなってしまうが、モジュールと小面積単一セルでは、製造方法や構造の違いなど異なる点も多く、変換効率の損失原因の解明を複雑にしている。
サブモジュールは、小面積単一セルとモジュールの中間的に位置づけられたもので、同所ではサブモジュールを通して、集積化に伴う本質的な変換効率損失要因の探求・改善を図っている。市販品でも使用されるレーザースクライビング、メカニカルスクライビングといった集積化工程を採用し、高度化することで、集積化に伴う特性損失を抑える開発などを進めている。今回、さらに集積化構造の高度化・改良を進め、その集積化技術と高品質CIGS光吸収層製膜技術を集約した。
今回のCIGS太陽電池サブモジュールでは、一般的に用いられるソーダ石灰ガラス基板を使用、光吸収層にはこれまで培ってきた高性能CIGS製膜技術を集約し、表面のミクロなくぼみ(ボイド)が少ない表面平坦性に優れた、均質かつ高品質な光吸収層を作製した。
今回作製した太陽電池サブモジュールは、4つの太陽電池セルを直列に接合した集積構造を持つ。この集積構造は、(P1)モリブデン(Mo)裏面電極のレーザスクライビングによる切り分け、(P2)バッファ層/CIGS光吸収層のメカニカルスクライビングによる切り分け、(P3)透明導電膜/バッファ層/CIGS光吸収層のメカニカルスクライビングによる切り分けからなる方法によって形成されている。
これらのスクライビングされた領域は、太陽電池の光電流生成に寄与しない領域(デッドエリア)となり、光電流の損失原因となる。今回、スクライビング条件、パターン形状などの最適化を進め、集積化工程により導入される電気的損失を最小限に抑えるとともに、デッドエリアの低減により光学的損失を低減した。高い集積化技術と高品質CIGS光吸収層製膜技術を融合した結果、CIGS太陽電池サブモジュールで、18%を上回る変換効率η=18.34%(開放電圧:2.963V、 光短絡電流:29.05mA、曲線因子:76.2%、指定面積:3.576cm2)を実現した。
今回作製されたサブモジュールの変換効率を独立機関で評価した際の公式記録データ。グラフの赤線が電流-電圧特性、緑線が出力-電圧特性を示し、ピークが最大出力になっている。図中のEff(da)は変換効率、VOCは開放電圧、F.Fは曲線因子、ISCは短絡電流を表す |
今後、研究グループでは、今回確立された高い集積化技術および高品質光吸収層製膜技術を、より大きな面積のCIGS太陽電池サブモジュールやフレキシブル太陽電池サブモジュールに応用し、CIGS太陽電池サブモジュールの高効率化・高機能化をさらに推し進めるとしている。