岡山大学は9月25日、乳児期の授乳とその後の子供の肥満との関連を検討し、生まれてから母乳で育った子供のほうが、粉ミルクだけで育った子供よりも、太り過ぎや肥満になるリスクが低いことを明らかにしたと発表した。
同成果は同大学大学院環境生命科学研究科人間生態学講座の山川路代 研究員と頼藤貴志 准教授、同大大学院医歯薬学総合研究科疫学・衛生学分野の土居弘幸 教授、同 井上幸子 大学院生、広島大学医歯薬保健学研究科公衆衛生学研究室の加藤承彦 特任助教らによるもの。詳細は、米国医師会の小児科領域雑誌「JAMA Pediatrics」オンライン版に掲載された。
今回の研究は、厚生労働省が2001 年から実施している「21 世紀出生児縦断調査」に収集されたデータをもとにして行ったもので、対象児は2001年1月10日から17日、および7月10日から17日までの間に出生した児全員。初回調査は生後6カ月、第2回調査は生後1歳6カ月、以降第6回まで1年おきに調査を実施し、第7回は7歳の時に実施され、以降1年おきに実施されている。
研究では、重要な交絡因子を調整しながら、生後6~7カ月の時点での栄養と、子供が7歳および8歳の時点での過体重や肥満との関連の検討が行われた。
その結果、生後6~7カ月まで母乳だけを与えられて育った子供は、粉ミルクだけで育った子供よりも、7歳の時点で太り過ぎになるリスクは15%、肥満になるリスクは45%減少することが判明した。8歳の時点でも同様の結果となったとのことで、これにより母乳育児が子供の肥満予防に効果があることが示されたとの結論を得たという。
母乳による育児については、乳児の呼吸器感染症や下痢の予防といったさまざまな良い影響があることが知られていたが、子供の肥満を予防する効果をもたらすかどうかについては、世界的に議論が続けられており、近年では、その効果はないとする考えが主流になりつつあった。
今回の研究成果は、そうした流れと反対のものとなるが、研究グループでは、今回の結果を踏まえた場合、日本のような先進国においても、母乳育児をさらに推し進めていくできであるとコメントしている。
また、なぜ母乳育児が乳児期を過ぎた子供の肥満を抑制するのかについては、母乳に含まれるホルモンなどの成分や、母乳と粉ミルクの摂取方法の違いなどが考えられるが、はっきりとした理由は未だ不明であるため、今後、その理由の解明を進める必要があるともしている。