「デジタル時代におけるマーケティングのベストプラクティス」を提供する、世界最大級のデジタルマーケティングカンファレンス「ad:tech tokyo(アドテック東京)2013」が、9月18日・19日の両日、東京国際フォーラムで開催されました。
日本での開催は5回目を迎え、いまやアジアパシフィック地域で最も重要なマーケティングイベントとなった「ad:tech tokyo(アドテック東京)2013」のエッセンスをみなさんと共有すべく、SMMLabが参加したカンファレンスの内容をご紹介します!
Keynote : The Social Soundtrack
Deb Roy(デブ・ロイ)氏
Chief Media Scientist, Twitter
Associate Professor, MIT
初日のオープニングキーノートに登場したのは、MIT(マサチューセッツ工科大学)准教授であり、認知科学の専門家として米国Twitter社のチーフ メディア サイエンティストも務める、「Bluefin Labs」共同創設者のDeb Roy(デブ・ロイ)氏。
今なお世界で最も大きな影響力を持つマスメディアであるテレビと、世界中に広がりつつあるソーシャルメディアが連動した、「新しいつながり」によって生み出される「ソーシャルサウンドトラック」をテーマに、テレビとTwitterの融合が、広告代理店やマーケターに、どのように新しい創造の時代をもたらすのかについて語りました。
「ソーシャルサウンドトラック」による新たなテレビ視聴体験
まずはじめにロイ氏は「美しい夕日は、誰かと一緒に見てそれについて語り合うことで、より印象深いものとなる」という人間の体験についての例にあげ、「大多数」が「同時」に体験出来るテレビが、「公共性」と「即時性」を持って「対話」出来るTwitterとの融合によって、よりソーシャルなものに変革しつつあると語り始めました。
テレビはもともと、同じコンテンツ(体験)を同時に多数の人に提供できる点が、メディアとしての大きな特徴でしたが、家庭内のテレビの数が増え録画技術が発達しコンテンツが細分化したことによって、番組視聴がより個人的な体験となる中で、その社会性を失いつつありました。しかし、Twitterでは同じ空間にいなくても同じ番組についてオープンにコミュニケーション出来るため、ソーシャルインタラクション(交流)による新たな共有体験を求めて、人々がまた同じ時間にテレビ番組を視聴しようとする動きが出来てきたというのです。
Twitter上のつぶやきは、その瞬間の人々の思いや考えの表出であり、それは「ソーシャルサウンドトラック」ともいえるもの。映画に音声(サウンドトラック)が加わって劇的に進化したように、テレビもTwitterの「ソーシャルサウンドトラック」によって大きく変革し、新たな魅力を獲得しつつあるとロイ氏は語りました。
Twitterによってテレビ「広告」も進化
テレビがTwitterと連動することによってソーシャルな会話の価値が向上し、そのビジネス活用によって「広告」にも新たな可能性を生み出しています。
米国のスポーツ専門チャンネル「ESPN」は、試合中継を観ていないTwitterユーザーに対して、短い広告付きの動画クリップを配信する「Twitter Amplify」という広告プログラムを利用し、視聴者拡大のチャンスを生み出しました。
※「Twitter Amplify」は2013年5月に発表され、アメリカではすでに30以上のネットワークで活用されているそうですが、日本でに提供は来年の予定です。
https://blog.twitter.com/2013/twitter-amplify-partnerships-great-content-great-brands-great-engagement
また、番組に関するツイートをトラッキングし、番組を観たであろう人を特定して、追加で広告コンテンツを配信する「TV ad Targeting」というプログラムが、一人ひとりの視聴者に合わせて広告を表示するという、広告主からの新たなアプローチとして紹介されました。
※参考記事
TV ad targeting now generally available; lifts brand metrics and engagement
https://blog.twitter.com/2013/tv-ad-targeting-lifts-brand-metrics-and-engagement-in-beta-now-generally-available
「Twitter、広告主にテレビ広告ターゲティング技術を提供」
http://japan.cnet.com/marketers/news/35035051/
Twitterはテレビの影響力を増幅
次にロイ氏はテレビ番組を視聴者に配信する2つの方法を比べ、Twitterのテレビに与える影響を解説しました。
「100人に同時配信する」「1日一人づつ100日配信する」という2つの配信方法は、どちらも「リーチ」した視聴者数という点では100人ですが、このメッセージが視聴者に与えたインパクト、影響力には大きな違いが出ることに関し、ロイ氏は「(メッセージが)到達する人数に加え、メッセージの影響力を決定する2つ目の要素はメッセージに作用する社会的加速である」と説明しました。
さらにロイ氏は、ヘルマン・エビングハウスの「忘却曲線」によって知られる記憶の急激な低下が、即時的な体験の重要性の基礎になっていること、スタンレー・ミルグラムによる「注意力」に関する実験によって、人々の注意力が周囲にいる目に見える集団によって体系的に誘導されると証明されたことを紹介。人間の記憶と忘却の性質によって、Twitterがテレビの影響力の増幅装置として機能する仕組みを説明しました。
「同じビデオが一斉に配信された場合、視聴者の体験には同時性が発生します。同時性のある体験と、共有体験に基づく会話の組み合わせによって発生するのが、社会的加速」であり、Twitterは「視聴者に対するメッセージの力をさらに増大させます。」また、「番組の視聴者によるライブツイートは、フォロワーに見られることによって建物を見上げる人々が他者に与えるのと同じ影響を及ぼします。Twitterが目に見える集団へ注目する状況を作り出し、テレビ番組へチャンネルをあわせる可能性を高めます」(ロイ氏)
米国では、調査した番組の29%でTwitterにおけるライブコメントが、テレビのチャンネル選択に影響を及ぼしているというNielsenの調査結果があるそうですが、「Twitterで盛り上がっているのをきっかけにその番組を見始めた」という経験がある人は、日本でも多いのではないでしょうか?
視聴率だけでは測れなくなった番組の本当の価値
途中、ショートスピーチに登場したビデオリサーチのNew Value Index Development Managerの長島英樹氏は、「現在、視聴率とツイート数の間には時間帯における淡い相関関係はあることがわかっているが、Twitterによって視聴率が上がったと言い切れるほどではない」としながらも、あるニュース番組で、22時46分にツイートが急増し、その後視聴率が上昇したというデータを紹介。
続けて、実際にツイートが多い番組は、平均より11.8%視聴時間が長いというグラフから新たな番組価値指標の必要性を示唆しました。
「Twitter×テレビ」で変わる「番組」と「広告」
再度登場したロイ氏は、「Twitterは視聴者のテレビ体験をよりよいものにし、共有したテレビ体験を共鳴させることの出来る視聴者ネットワークを提供することで、テレビの影響力やリーチ率を高める」といい、「テレビには今、Twitterの融合によって大きな革新がおきており、その変革によってテレビの番組編成と広告は、その根底から変貌していく」と基調講演を締め括りました。
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