MM総研は2013年9月18日、国内MVNO市場の2012年度実績と2015年度までの予測を発表した。2012年度末(2013年3月末)時点のMVNO回線契約数は前年度末比61.3%増の1037万。MNO(移動通信キャリア)が運営しているMVNOの回線占有率は50%に迫っているという。
MVNOサービスの総契約回線数および売上額は、2012年度末時点で1037万回線/3570億円となり、11年度末の643万回線/2,235億円から回線数で61.3%、売上額で59.7%増加した。
また、13年度以降の契約回線数および売上額は、13年度末は1394万/4450億円、14年度末は1853万/5275億円、15年度末には2392万/6250億円となり、12年度末~15年度末までの年間平均成長率は契約回線数で32.1%、売上額で20.5%になると予測している。
12年度末時点の契約回線数を回線種別に分類すると、携帯電話(3G/LTE)が500万(シェア48.2%)、PHSが25万(同2.4%)、BWA(WiMAX+AXGP)が512万(同49.4%)となり、携帯電話とBWAがシェアを2分している状況にある。
12年度末時点の総契約回線数1037万に占める「MNO運営のMVNO(KDDI・ソフトバンクモバイルなどの移動体通信キャリアがMVNOとして他の移動体通信キャリアの回線を提供する形態)」の回線占有率は46.4%となっており、過半数に迫る状況だという。
MM総研の予測では、キャリアのサービスと比較して通信量・通信速度・料金・その他付加価値メニューで差別化された個人向けSIMカードの販売が中期的に市場を牽引するとしている。また、将来的にマルチキャリア対応(複数のMNO回線をまとめて提供)が実現すれば、M2Mを含む法人向けソリューションで市場が拡大していくと予測している。
今回の調査で同時に実施したWebアンケートの結果では、6万件の有効回答中、通信キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルなど)以外のMVNO事業者によるデータ通信回線サービスについて、「知らない」と回答した人は73.8%だった。
一方「知っているが、利用したことはなく、利用の検討もしていない」との回答が17.9%で、「現在は利用していないが、過去に利用していたことがある」は1.6%、「まだ利用したことはないが、利用を検討している」が3.7%、「現在利用している」は3.1%という結果だった。
MVNOサービスの利用者に対して、利用しているサービスの種類を聞いたところ、「SIMカード単体」が44.9%と最も多く、次いで「モバイルルーターとのセット」が36.3%となり、この2種類のパターンで80%を超えた。一方、「スマートフォン端末とのセット」は9.7%、「タブレット端末とのセット」は5.4%と、この組み合わせはまだ少数派と言える結果になった。
主要事業者別で比較すると、日本通信、インターネットイニシアティブ(IIJ)、フュージョン・コミュニケーションズ、DTIの4事業者は「SIMカード単体」と回答した人の割合が6割を超えているのに対し、NECビッグローブ、NTTコミュニケーションズの2事業者は「モバイルルーターとのセット」の割合が「SIMカード単体」の割合を上回るなど、事業者によって対照的な結果となっている。「ほぼスマホ」を販売しているNECビッグローブは「スマートフォンとのセット」が18.8%と比較的高い割合となった。
MVNOサービスに支払う金額は「月額500円以上1,000円未満」が24.7%と最も高く、次いで「月額3,000円以上4,000円未満」が16.8%。「月額500円以上1,000円未満」の価格帯では、NTTドコモの回線を利用した月額1,000円未満のサービスが今年に入って急増している。
一方、「月額3,000円以上4,000円未満」の価格帯では、UQコミュニケーションズのWiMAX回線を利用したMVNOサービスの多くが月額3,000円台後半の料金プランを提供している。
主要事業者別にみると、DTI利用者は「月額500円未満」の利用が72.2%と圧倒的に多い。同社のMVNOサービスは月額490円の「ServersManSIMLTE100」が唯一のプランとなっており、同プランの基本サービスのみの利用者が多くを占めている。
逆に顧客単価が高くなっているのがNECビッグローブ。「月間1,000円以上2,000円未満」が24.8%、「月間2,000円以上3,000円未満」が21.4%、「月間3,000円以上4,000円未満」が23.9%と、いずれも主要事業者の中では最も高い。
MM総研は、「同社のMVNOサービスはモバイルルーターやスマートフォン端末とのセット販売の割合が高く、安値競争に陥っている感もあるMVNO市場の中で、独自の付加価値で顧客単価を高く保っているNECビッグローブの戦略は注目に値する」としている。