アールエスコンポーネンツ(RSコンポーネンツ)は9月18日、電子回路基板の設計から筐体の設計まで可能な3D CADツール「DesignSpark Mechanical」の無料提供を開始したことを発表した。
同ツールは、3D CADツールベンダであるSpaceClaimと共同開発したもので、「情報端末のボディ」、「制御システムの筐体」、「自動車部品や車体」などの3次元設計を行い、それを3Dプリンタで出力することが可能となっている。
直感的に操作可能な「ダイレクトモデリング方式」を採用することで、立体形状の編集や製品コンセプトの3Dデータを自由に編集でき、設計開発にかかる時間の短縮を図ることが可能。また、モデリング作業のほとんどは、「プル」「移動」「フィル」「組み合わせ」の4つの主要ボタンで操作することが可能なほか、Windows OSのショートカットキー(ctrl+c、ctrl+v、ctrl+zなど)にも対応しており、専門的なトレーニングを受けていないエンジニアや学生でも簡単に使えるツールとなっている。
さらに、3D押し出しや回転、スイープなどのジオメトリを2Dデータを残すことなく実行が可能なほか、構成要素の選択により、寸法値のカンタンな編集や、ユーザーごとの寸法設定や保存、パーツのアセンブリの作成・分解、形状描画前のアセンブリ構造の作成などに対応している。
このほか、同社が運営するエンジニア向けコミュニティサイト「DESIGN SPARK」にて提供される各種ツールとの連携も可能で、3万8000点以上の部品の3Dモデルをダウンロードすることができるほか、基板設計ツールで作成したプリント基板形状データをインポートすることも可能だ。加えて、部品表(BOM)見積もり機能の活用により、設計に使用した部品の費用の見積もりを即座に作成することが可能となっている。
RS ComponentsのHead of Technical MarketingであるMark Cundle氏は、「我々のカスタマは大きく分けて、メカトロニクスのエンジニアとエレクトロニクスのエンジニアの2つに分けられるが、いずれも製品のQTAT化が求められながら、開発人員の削減と使用する技術の難易度が向上しており、習熟のための時間がとりづらい、といった時間に余裕がないという共有の課題を抱えている」とし、RSコンポーネンツは、これまでもそうした課題の解決に向けた取り組みを進めてきたことを強調。これまでにも3D設計向けに3Dモデルを3万5000点、24ツール向けに提供してきており、これにより従来の、個別のコンポーネントを手作業で準備をするといった手間に比べ、2時間から2日ほど作業の軽減が可能になったとする。
また、従来の3D CADの多くが、フィーチャーベースのCADツールであり、「それにより一部の形状変更をした場合、全体のデザインに影響を及ぼすなどの可能性があった」とのことで、今回の3D CADツールでは、そうしたフィーチャーベースCADツールの補完を目指し、CAD専門家以外のエンジニアが簡単に活用できるものを目指して開発が行われたという。
製品ライフサイクルが短くなった現在、基板設計や機構設計などと同時に筐体デザインも進められることとなってきたが、フィーチャーベースのCADツールでは、小さい独立した部品ごとに組み合わせていく手間などが課題となっていたという |
なお、同ツールはDESIGN SPARKの専用サイトから無料でダウンロードが可能で、基板CADフォーマットやSTL、STEP、OBJ、SKPなどの3Dフォーマットのインポートが可能なほか、出力フォーマットとしてもAutoCAD(DXF)、OBJ、STL、3D pdf、XAML、ipg、pngに対応している。また、今後、Trancepartsとの連携により、1億個以上の3Dモデルの利用が可能となるほか、DESIGN SPARK上にある共有スペース「Design Share」にて、作成物をシェアするといったことも可能だという。
最上段左から右下に向けて順に「DesignSpark Mechanical」の利用イメージ。基板と筐体を同時にデザイン可能で、筐体に合わせて基板の設計変更などもできる。下段2段は実際に3Dプリンタで出力したデモ筐体 |
3D CAD 「DesignSpark Mechanical」 の紹介 |