ルネサス エレクトロニクスは9月12日、車体制御システム向けに開発効率の向上、システムコストの低減、システムの低消費電力化および機能安全への対応を実現する16ビットマイコン「RL78/F13」および「RL78/F14」ファミリを発表した。
近年、自動車には走る、曲がる、止まるといった従来の機能に加え、安心、安全、快適な車の実現に向けてクラウドにつながるIT技術やリアルタイム認識といった新技術の搭載が始まり、急速に電子化が進んでいる。従来通りの自動車メーカー別、車両別の仕様の多様化が求められる一方で、このような動きに伴い、全てのECUを共通のプラットフォームソリューションでカバーできる幅広いマイコンのラインナップが求められている。また、車両の電子化が進展するにつれて、1台の車に搭載されるECU車載制御ユニットが増加している。このため、自動車メーカーやECUメーカーは、ECUの小型化、軽量化、消費電力の削減に加え、安全性の確立を追求している。
そこで今回、これらの市場ニーズに応えるため、パワーウィンドウやドアミラーなどの車体制御システムだけでなく、電動ウォーターポンプや冷却用ファンなどの車載モータ制御システムをはじめとする幅広い車載分野向けに「RL78/F13」ファミリ60品種、BCM(Body Control Module)やHVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)など、車体制御システムの中でも、特に大容量メモリを必要とする用途向けに「RL78/F14」ファミリ31品種の合計91品種を発表した。
同製品群は、システムの仕様違いによるROMサイズ変更から、まったく異なるシステムへの流用などに対応するため、CPUコアやCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)といった車両内ネットワークなどの各種周辺機能および端子レイアウトが共通となっている。「RL78/F13」は、メモリ容量が16~128KB、パッケージの端子数が20~80ピン、「RL78/F14」は、メモリ容量が48~256KB、端子数が30~100ピン、RAMは最大20KBまで拡張可能。このように多くのラインナップを準備しているため、幅広いアプリケーションに対応できる。これにより、ソフトウェアや基板などの設計資産の流用による開発プラットフォーム構築が可能になるため、ユーザーのシステム開発効率の向上に寄与する。さらに、従来のCPUコア「78K0R」、「R8C」を搭載したマイコンの高機能な周辺回路をそれぞれから採用しているため、既存資産の有効活用が可能になっている他、CPUコアに乗除算・積和演算命令を追加し、さらなる性能改善を図っている。
また、ECUの小型化ニーズに応えるため、QFN(Quad Flat Non-Leaded Package)パッケージを新規に開発。32ピンSSOP(Shrink Small Outline Package)と比較した場合、実装面積が約69%削減できる。同QFNパッケージは従来のQFNパッケージに比べ、端子側面にくぼみをつけることで実装時のはんだ濡れ性を向上させているため、工場の生産ラインを変更することなく実装可能。また、採用することで基板サイズを縮小できるため、ECUの小型化にも寄与する。さらに、システムを小型化できるため、アクチュエータに直接マイコンを実装する機電一体化の要求が高まってきているが、ウォーターポンプのようなアプリケーションでは周囲温度が高温になるため、従来のマイコンでは実装が困難という課題があった。同製品は周囲温度150℃での動作が可能なため、アクチュエータに直接マイコンを実装できることから、システムのさらなる小型化にも寄与する。
しかも、低消費電流プロセスを採用することにより、スタンバイ時の消費電流を従来品の1μAから500nA(Ta=25℃でのTyp.値)と50%削減。また、スタンバイ中でもCPUを起動せずにA/D変換が可能な機能を搭載するなど、システムの低消費電力化が図れる。
この他、機能安全規格ISO26262への準拠に向けて、電気・電子機器の故障を検出し、安全を確保できる機構(機能安全)の強化が車載システムに求められており、マイコン自身にも自己診断機能の搭載が必要とされている。同製品では、基準電圧や電源をA/D変換し期待値と比較することでA/Dが正常に動作しているかテストする機能、割り込みによるスタックのオーバーフローを検出し暴走を防ぐ機能や、内蔵発振器と比較することで外部クロックの発振停止を検出する機能など、機能安全をサポートする様々なハードウェアを搭載しており、システムの機能安全対応に寄与する。
なお、サンプル価格は製品によって異なるが、「RL78/F14」ファミリの48ピンパッケージ、128KBのメモリを搭載する品種で600円となっている。10月よりサンプル出荷を開始し、2014年9月より量産を開始する。2015年9月には月産250万個体制を構築する計画としている。