Freescale Semiconductorの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンとロームは9月11日、都内で会見を開き、日本ならびにグローバルでの車載市場に向けた包括的なソリューションの提供を目指した協業を開始することで合意したことを明らかにした。

Freescaleは車載マイコンシェアで世界2位、一方のロームは車載ディスクリートシェアで世界3位であり、今回の協業について、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン代表取締役社長であるディビッド M.ユーゼ氏は、「互いの強みを活かすことができるシナジー効果の高いパートナー」と表現しており、これによりカスタマに対し、エレクトロニクス化の進展で複雑化する車載機器開発の期間短縮などが可能になるとするほか、コスト効率の高い製品をソリューションとして提供できたり、互いのカスタマに対する相互アプローチによるビジネスの拡大が見込めるとしており、近いうちにセールスプロモーションの分野でも、日本および世界でコラボレーションを進めていく計画とする。

車載半導体分野で高いシェアを持つ企業同士ながら、その適用分野はプロセッサとその周辺素子であり、決して競合していない。むしろ、それらを組み合わせ、ソリューションとすることで、カスタマは余計な設計負担などを減らすことが可能となり、機器の開発を加速することが可能になるというのが、今回両社が意図するところとなっている

また、ローム 取締役でLSI商品戦略本部長の高野利紀氏は、「車載市場はロームにとっても重要市場。高品質、短納期を目指してビジネスをこれまで行ってきており、国内での実績はもとより、近年は海外の電装メーカーなどからも優秀サプライヤとしてに止められるようになってきた。現在は、LSIや電子部品という単体ではなく、ソリューションとして提案していくことを積極的に進めており、今回の取り組みもソリューションとしての提供をいう戦略の強化に向けたもの」と説明。世界の車載半導体分野で多くの実績と経験を持つFreescaleと協業することで、それぞれの国や地域で要求される最適な周辺回路や部品を提供することが可能となり、これによりカスタマは設計負荷の低減を図ることができ、高品質で安心・安全な機器の開発の容易化が可能になるとする。

ロームはこの数年、車載向け半導体のグローバル展開を強化を図っており、国内外の自動車メーカーのほか、日本や欧州のティア1メーカーからもアワードを受賞するほど高い信頼を得るまでに成長してきたという

そうした今回の取り組みの具体的な内容としては、現在、互いの製品を1つの評価ボードに集積して提供することを目指した開発が進められているという。すでにFreesacleの16ビットミクスドシグナルマイコン「S12 MagniV」の評価ボードに、ロームの車載向けにすでに実績を有するディスクリート製品の搭載を進めており、これにより自動車メーカーに直接部品を供給するティア1などのカスタマはモジュール開発を加速することが可能になるとしている」。

Freesacleの車載向け16ビットマイコン「S12 MagniV」とロームの各種ディスクリートを組み合わせた評価ボード。これにより、マイコン単体の評価ではなく、実際の機器への搭載を前提とした評価をいきなり実施することが可能になり、開発期間の短縮を図ることが可能になるという

また、S12 MagniVのみならず、Power Architecture採用の32ビットマイコン「Qorivva」への適用も進めているとするほか、ローム側としては2013年11月より、これまでFreescaleが自社のパワーマネジメントIC(PMIC)を搭載する形で提供してきたi.MX 6シリーズ搭載車載インフォテイメント用プラットフォーム「SABRE for Automation Infotainment(SABRE AI)」向けに、PMICの代わりに、より低消費電力化、安定化などを図ることが可能なロームのディスクリート電源ICを搭載する形のリファレンスデザインの提供を開始する計画。回路図データとして提供されるため、カスタマは仕様に応じて、ロームのディスクリート製品を組み合わせて、基板に実装することが可能だという。

左の画像の緑線で四角に囲まれた部分が従来のi.MX 6とPMICを搭載したプロセッサカード。このPMICの代わりにロームのディスクリートに置き換えたリファレンスデザインがロームより提供されることとなる(中央)。右は実際にロームのディスクリートを搭載したi.MX 6プロセッサカードで、カスタマからの要望があれば、貸し出すことも検討するという

両社では、今回明らかになった取り組みは、第1弾のものであり、車載向けVybridなど、今回取り上げられなかった車載向け半導体についても、今後の話し合いの中で、どう取り組んでいくかを決めるとしており、そうした今後の展開についてユーゼ社長は「Freescaleとしては、車載マイコンシェア1位の奪還を目指して、今後もさまざまな取り組みを進めていくこととしており、そうした新たな取り組みについては、今後6カ月以内に何かしらの形でアナウンスできるだろう」との見方を示している。

なお、今回のi.MX 6向けリファレンスデザインボードなどは、9月20日~22日に富士スピードウェイにて開催される「The Freescale Experience」にて展示されるほか、10月1日から5日にかけて開催される「CEATEC JAPAN」のロームブースでも展示される予定だという。

フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン代表取締役社長であるディビッド M.ユーゼ氏(左)とローム 取締役でLSI商品戦略本部長の高野利紀氏(右)