長崎大学は9月6日、平坦地が少ない長崎市に住む高齢者の生活支援に向け、「ラック・ピニオン式 電動手すり」を開発したと発表した。

同成果は、同大産学官連携戦略本部の北島栄二 准教授らによるもの。

平坦地が少なく、かつそうした平坦地を事業所や行政施設などの用途で用いている長崎市では、高度成長時代から斜面地が居住の場として活用されてきたが、住民の高齢化が進み、細い階段道の昇降などが問題となってきている。そうした背景を元に、長崎市でも斜面市街地に簡易型リフトの設置を進めているが、その事業費は1基あたり、3000万円程度と高額であることから、未だに市内3カ所に設置するにとどまっているという。

また、同じ斜面市街地に暮らす高齢者であっても、その身体状態が軽度か中・重度であるかによっても移動支援方法が異なるなどの問題があることから、研究グループでは「平地歩行が可能な軽度者」と「車いす介助を受ける中・重度者」に分け、それぞれにサブテーマを設定する形で共同開発体制を構築して、研究を行ってきたという。

今回開発されたラック・ピニオン式 電動手すりは、取り外し可能な新設のガイドレールを介し、既設の歩道用ガードパイプへ設置することで使用するタイプで、四角形状の手すりを備えた本体はモータ駆動を採用。高齢者本人がレバーを操作し、歩行に合わせて、ガイドレール上の任意の位置に向かって本体の手すりの縦部分を掴んで昇り、横部分を支えに降りることで身体的な負担を軽減できる点が特徴となっている。

また、5kg程度の荷物は本体で運搬し、高齢者以外(妊婦、買い物やゴミ出しなど)の利用も可能であり、そうした用途拡大も図っていきたいとしており、今後は、駆動方法とモータ制御については安全性とユーザビリティ(使いやすさ)を高め、ガイドレールについてはコンパクトな設置を考慮する設計にブラッシュアップする必要があるとしており、すでにガイドレールの構造を刷新する駆動方式、およびケーブル式電動手すりの開発を進めているとしている。

開発された電動手すり試作機。今回開発されたものは第2次試作機で、重量10kg、縦30cm×横18cm×厚さ8cm。2013年2月に1次試作機が開発されており、そちらは重量15kg(バッテリー含む)、縦53.5cm×横16.5cm×厚さ12cmとなっている