Facebook、Twitter、LINEなどのSNSが生活の中に浸透しはじめた現在、企業においてもその仕組みを取り入れ、経営に活かす動きが加速している。IDCによれば、世界市場における「エンタープライズ・ソーシャル・ソフトウェア」は2016年まで年平均42.4%で成長する見込みという。数あるITソリューションの中でも、今、一際注目を浴びているジャンルだ。
ビートコミュニケーション 広報 小石裕介氏 |
では、社内SNSを導入するとなった場合、どういった点に着目して製品を選ぶべきなのか。また、定着させるにはどういった点に注意して運用するべきなのか。本誌は、そうした社内SNSのノウハウについて、国産社内SNS「Beat Shuffle(http://beat.co.jp/)」を提供するビートコミュニケーションの広報責任者 小石裕介氏に話を聞いたので、その様子をお伝えしよう。
社内ソーシャル普及の背景
急速な普及を見せる社内SNS。以前は、積極的でなかった企業も本格的な検討を始めているという。
その背景について小石氏は、次のように説明する。
「これまで効率主義のなかでビジネスプロセスを洗練してきた企業が、業務効率化による業績向上に行き詰まり、コラボレーションを経営の重要テーマと捉えるようになりました。そうした中で、コラボレーションを促進する解決策として社内ソーシャルが注目されています。その背景には、やはりここ数年間でSNSが情報共有の手段として受け入れられてきたことも関係しています。企業での情報共有の手段は、いまだにEメールが中心ですが、普段からSNSを使いこなしている社員とっては、ギャップや不便さを感じるようになってきています。一方、企業側もその変化に追いつけていないことに危機感を覚えていて、経営戦略の中枢に社内ソーシャルを位置づけようとする企業が急増しています」(小石氏)
最近では社内ソーシャルを提供するベンダーが増えており、多くの製品の中からどれを選べばよいのか迷うという声も少なくない。製品の中には「社内ソーシャルと謳いながら実態はそうではないものもある」(小石氏)と言い、まさに玉石混交となっている。会社や上司の指示でツール選定を任されたものの、どれが最適なのか決めきれずに頭を悩ませている担当者も多いだろう。
では、製品選定において重視すべきポイントはどこなのか。小石氏は、次のように答える。
「SNSとは言っても社内で利用する以上、当然ながら社内システムという位置づけになります。つまり、社員全員が使いこなせることが非常に重要です。そうした時に、ポイントとなるのがユーザーインタフェースマニュアルがなくても使えるような、直感的に操作できる製品を選ぶことが肝になります。こうした点は、ITに対するリテラシーの高い情報システム部門が主導してツールを検討する場合、見落としがちな部分と言えます」(小石氏)
SNSは比較的新しいツールであるため、ITに不慣れな社員から「難しい」と拒絶されるリスクがあるという。小石氏は、「特に海外製品に関しては注意が必要」と警鐘を鳴らす。
「製品によっては、ローカライズが不十分で使いづらかったり、国内のサポートが弱かったり、というケースもあるようです。現在Beat Shuffleをお使いの某大手メーカーさんは、以前、知名度の高い海外製品を利用していましたが、ユーザーインタフェースが複雑で実際に利用していた社員は全体の20%にも満たなかったそうです」(小石氏)
機能面はどうなのか。社内ソーシャルは基本的に、つぶやき機能、コミュニティ機能から構成される。そして、「そうした基本機能をどういったかたちで洗練するかが、大きな差別化要因になる」(小石氏)という。
「例えば、Beat Shuffleでは、コミュニティ機能に『トピック』という概念を追加しています。タイムラインは、即時性が強くその場限りの情報を扱うスペースですが、トピックをうまく活用することで、顧客提出用の資料や議事録などの業務上生まれたアウトプットをストックすることができます。また、独立したQ&Aの仕組みも用意しており、社内版のYahoo知恵袋のような感覚で、質問に対する回答をナレッジとして蓄積できます。質問と回答といったフローで流れてしまいがちな情報を自然にストックできる仕組みを取り入れ、業務効率向上を強く意識した設計になっています」(小石氏)
社内ソーシャルの導入目的
一般的なSNSの利用目的は、コミュニケーションの深化であることがほとんどだ。実際、SNSの普及により、リアルタイムに友人の近況を知ることができるようになり、コミュニケーションの在り方は変化してきている。
しかし、社内ソーシャルにおいては、必ずしもコミュニケーションだけが導入目的ではないという。
「社内ソーシャルの導入目的は、ここ最近大きく変化しています。以前は、コミュニケーションの活性化といった漠然としたものが多かったのですが、最近では、ナレッジの共有や部署横断での製品開発など、社員の多様性や自発性を活かすという目的にシフトしています」(小石氏)
では、なぜこうした目的のシフトが起きているのか。
「組織は、多様であればあるほど強くなる。しかし、多様性が高まるとマネジメントが難しくなる。組織として掲げていた共通の目的も、いつしかなおざりになるというケースが少なくない。部署間や距離の壁を排除し、多様性を活かす仕組みとして、企業内にSNSを取り込む企業が増えてくるのは自然な流れ」と小石氏は分析する。
社内SNS成功のポイント
「なかなか定着しない」と嘆く情シスが多い社内SNSだが、導入を成功させるポイントはどういった部分にあるのか。
各種のユーザー事例を踏まえて小石氏が挙げたポイントは以下の3点である。
- 経営層から社内ソーシャルへの理解を得る
- 業務と関連した利用を行う
- ツールが社員に受け入れられる
「最終的には、自社にフィットした製品を選定することが望ましいのですが、経営層が社内ソーシャルに理解を示し、業務と連携させた利用ができることが重要です」と小石氏。そのうえで社員にとっての使いやすいものである必要があり、「最初から社員が使いやすいものを選ぶ、あるいは使いやすいものに洗練していく努力が必要」(小石氏)と語る。
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以上、本稿では、小石氏の話を基に社内ソーシャル選定のポイントから定着のポイントまでを簡単に紹介したが、いかがだっただろうか。
小石氏は、「社内ソーシャルを導入してすぐに課題が解決する訳ではありません。社内ソーシャルにいち早く取り組み、情報共有を行う風土や文化を育てることのほうが重要」とも語る。
スピード感のある強い組織を作るにはどうすればよいのか。「経営における永遠のテーマ」とも言えるこの課題に対して、社内ソーシャルが現代の有力な解決策の1つであることは間違いない。本稿の内容を参考に検討していただけたら幸いである。