IDC Japanは8月29日、国内のライフサイエンス/医薬品関連IT支出額予測を発表した。
これによると、国内ライフサイエンス産業および医薬品産業を合わせたIT市場規模(ハードウェア、ソフトウェア、ITサービスを含む)は、2012年のIT支出額が3,079億円、2013年が3,130億円(前年比成長率1.7%増)で、2012年から2017年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は1.8%であり、2017年には3,367億円へ拡大すると予測している。
ライフサイエンス産業(ライフサイエンス関連研究開発/サービス企業、大学/教育研究機関、公的研究機関を含む)は、短期的には、政府の「日本再興戦略」や「健康・医療戦略」を受けて、大学の研究施設や公的研究機関を中心にハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)や高度解析技術をベースとする研究開発投資が拡充。
中長期的には、アカデミック臨床研究機関(ARO)に代表されるトランスレーショナルリサーチの推進によって、基礎研究と臨床開発の間のデータ連携/情報共有が本格化し、ビッグデータ関連ソリューションやアウトソーシングに対する需要が高まるとみている。
医薬品産業(医薬品製造、卸売、小売を含む)についてみると、短期的には、「コンピュータ化システム適正管理ガイドライン」や「企業活動と医療機関等の関係の透明性ガイドライン」、「医薬品リスク管理計画」への対応/改善、インターネット/モバイルとMRとを連携させたマルチチャネルプロモーションの推進など、事業拡大に向けたIT支出が継続。
中長期的には、一元的な医薬品ライフサイクル管理の観点から、基礎研究、臨床開発、製造/物流、学術/市販後調査、営業支援を結ぶデータ連携/情報共有が本格化すると同時に、IT支出のけん引役が、新興国市場など海外事業展開に注力する国内系メーカーから、豊富なパイプラインを背景に新薬上市を見込む外資系メーカーへとシフトし、標準化、グローバル化の傾向が強まるとみている。
従来、部門縦割り傾向が強かったライフサイエンス/医薬品産業では、様々な法規制の強化を契機に、バリューチェーンを構成する上流と下流の業務プロセスをシームレスに連携させながら、製品ライフサイクルを一元的に管理できる横断的な体制の構築が急務となり、IDC Japanでは、「ソリューションベンダーは、技術志向の上流部門とマーケティング志向の下流部門に分散したデータサイエンティストが円滑に協業できる、ビッグデータ人材の育成支援メニューを開発/提供すべきである」と述べている。