伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、9月より、国土交通省が推進する建設生産プロセスの管理手法CIM(Construction Information Modeling / Management)に対応した情報共有クラウドサービス「CIM-LINK」の提供を開始する。
建築(architecture)分野では、建物の3次元の形状情報に材料やコストなどの属性情報を加えて、コンピュータ上で作成したモデルを建物の設計から施工、維持管理にわたる建築ライフサイクルの全ての段階で共有する「BIM(Building Information Modeling / Management)」という手法が一般化している。BIMによって、設計の詳細まで含めた情報共有が可能になり、建築業務の効率化が図られている。
一方、橋梁や道路などの建設(construction)分野では、構造物の建設が土木作業を伴うため、地形や地質および周辺環境の情報も考慮する必要があり、共有すべき情報量が多くなる。また、設計や施工、維持管理を分離発注することにより、建設プロジェクトの関係者が多くなり、工事も広範で長期になるため、BIMのようなIT活用がなかなか進まない状況にあった。
国土交通省では、この建設分野における業務効率化のため、BIMを応用したCIMの活用を提唱している。CIMの採用で、計画、設計、施工、維持管理という建設生産プロセスにおいてITを活用して情報の一元化を図り、コストを抑えつつ、公共事業の安全性や品質を高めることができるとしている。
CIMは、国土交通省が主導し、2012年度から設計段階での試行が始まっている。2013年度からは試行範囲を拡大し、2014年度から基準の策定と本格的な導入が見込まれているという。
今回、CTCが提供を開始する3次元モデル情報共有クラウドサービスCIM-LINKは、CIMに対応した建設分野向けのサービス。CTCのクラウドITインフラサービス「cloudage CUVIC OnDemand」上で提供されるクラウドサービスの1つであり、エンタープライズレベルの大規模なプロジェクトでの使用を想定しているという。
継続的に複数のプロジェクトを管理する事業者向けとプロジェクト単位で利用する事業者向けの2種類のメニューが用意されており、前者は10プロジェクトが使用できるサービスで月額12万円から、後者は月額3万円からの提供を予定しているとのことだ。
図面、CIM準拠の3次元モデル、画像や各種ドキュメントなどを、発注者から測量会社、建設コンサルタント、建設会社まで、建設プロジェクトを通して共有することができる。また、直観的なユーザーインタフェースにより、専門的なトレーニングを受ける必要なく、使用を開始することが可能だという。
例えば、施工段階で発生した新たな地形情報や設計変更の理由、施工工程などを3次元モデルに含めて蓄積することで、維持管理段階における不具合発生時の診断を速やかにし、センサーネットワークと連携することで、社会インフラの老朽化対策としても活用できる。
CIM-LINK上で取り扱うことのできる3次元モデルは、梁や柱といった構造物の形状だけでなく、コンクリートや鋼といった物性情報、経過年やコストなどの情報を部分ごとに埋め込むことができ、さらに、さまざまなソフトウェアが提供するパーツや地図情報を組み合わせて、統一的なモデリングを行うことが可能である。3次元モデリングソフトウェアとしては、CTCが自社開発したソフトウェアを含め、一般的に使用されている多様なCAD製品に対応する。