横浜市立大学(横市大)は8月27日、小児の難治性てんかんの原因遺伝子の1つを発見し、細胞内シグナル伝達の障害という新しいてんかんの発症メカニズムを示唆する結果を得たと発表した。
同成果は、同大学術院医学群 遺伝学の才津浩智 准教授、松本直通 教授、同生化学の緒方一博 教授、浜松医科大学神経生理学の福田敦夫 教授らによるもの。詳細は、「The American Journal of Human Genetics」オンライン版に掲載された。
てんかん患者数は、人口の1%程度と推定されており、小児期に発症したてんかんの70~80%は治療により発作を完治させることが可能と言われているものの、抗てんかん薬によるコントロールが難しい(難治性)症例も多く存在することが知られており、その有効な治療法の確立のための、原因遺伝子の特定などが求められていた。
今回研究グループは、全エクソーム解析を応用し、379例の難治性てんかん患者中4例にGNAO1遺伝子が両親にはなく、その患者で突然変異が生じている(新生突然変異)ことを確認した。
これらの変異は虫から哺乳類まで同じように持っているアミノ酸に変化をもたらすもので、4名の患者では、難治性のてんかんに加えて、知的障害、運動発達障害を呈していたほか、その内2名では、意図しない異常運動が起こる不随意運動が確認されたという。
また、研究の結果、GNAO1遺伝子からは、神経細胞における細胞内シグナル伝達に重要な役割を果たすことが知られている3量体Gタンパク質のαサブユニット(Gαo)が作られるが、4つの変異は、この3量体Gタンパク質の立体構造モデルの構造を不安定にする、あるいはシグナル伝達の障害を引き起こすことが示唆され、変異Gαo発現細胞では、細胞内での発現部位の変化とカルシウム電流の抑制障害が示唆されたという。
今回の成果について研究グループは、治療に抵抗性を示す難治性のてんかんの原因遺伝子を明らかにしたばかりでなく、細胞内シグナル伝達の障害という新しいてんかんの発症メカニズムを強く示唆するものであり、今後、細胞内シグナル伝達という観点からてんかんの病態の理解がすすみ、難治性てんかんの新しい治療法の開発に寄与することが期待されるようになるとコメントしている。