日立ソリューションズは、来年ロシアのソチで開催される冬季オリンピックに向け、ソチパラリンピック大会の日本代表に内定した同社スキー部選手の強化トレーニングのためのシミュレーションシステムを開発したと発表した。開発費用はおよそ700万円だという。
同社は、2004年に障がい者スキー部「AURORA(アウローラ)」を設立し、クロスカントリースキーで世界を目指す選手や監督、コーチを社員として雇用し、支援してきた。
今回のシミュレーションシステムは、同志社大学 スポーツ健康科学部の協力の下、GPS(全地球測位システム)データと映像をトレッドミルに組み込み、ソチパラリンピック大会で使用する競技コースの地面の傾斜や景色を再現するもの(トレッドミルは屋内で歩行や走行練習するためのトレーニング器具で、大型のランニングマシンのようなもの)。
選手はローラースキーを履いて、プロジェクタで映し出された映像を見ながら、トレッドミル上を走る。目の前のスクリーンには、ソチのオリンピックコースの実際の場所に合った景色を映し出すように調整され、走行中の選手が傾斜の上り下りを速やかに判断できるように、映像に矢印をが示される。そして、スクリーンの下部分にはコース全体と走行中の区画も表示し、コース全体を見据えたトレーニングができるようになっている。
現地の映像とGPSデータは、コーチなどが頭に小型のカメラを装着し、現地を試走することで集めたという。そのため、頭の角度によって撮影映像の角度が大きく変動するため、同社の技術を使って映像を補正しているという。
トレッドミルの傾斜はコースに合わせて変動するが、ハードウェアの限界により、実際の斜面の変化にトレッドミルが追従できない場合もあるため、再生映像のスピードを変えたり、止めたりしてトレッドミルと同期をとっている。
今回のシステムの開発した背景には、ソチオリンピックの工事の遅れがあるようだ。
日立ソリューションズ スキー部 監督 荒井秀樹氏は、「バンクーバーのときは3年前から試走できたが、ロシアでは工事が遅れており、まだ施設が完成していない。現在はソチにいってトレーニングできる環境ではない。そこで、ソチのコースをトレーニングできないかと考えたとき、当社の映像とGPSの技術力を使って再現できないかと考えた」と説明する。
選手たちは本システムを主にオフシーズンの間に、同志社大学に出向いてイメージトレーニングとして利用する。また、同志社大学 スポーツ健康科学部 藤澤 義彦教授のゼミナールでは、学生が研究活動の一環として、トレッドミルでの走行時の選手たちの乳酸値や心拍を測定して分析する。それらの結果も今後のトレーニングに活用される予定だという。