島津製作所は8月22日、クラス最高感度を実現したトリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8050」と、同機に対応したワークステーション「LabSolutions LCMS Version 5.60」を発表した。
LC/MS/MSによる定量試験やスクリーニング、およびプロファイリングにおいて、データの信頼性を損なわずに時間短縮したいというニーズがこれまでもあったが、へルスケアや臨床分野でのLC/MS/MS需要の高まりとともに、高感度定量における時間短縮への要求はさらに大きくなってきている。そこで今回、高速性能とクラス最高感度を両立させた「LCMS-8050」をUFMS(超高速質量分析計)ラインナップの最上位機種として市場投入したという。
同製品は、ネブライザガスの周囲に加熱ガスを追加することで脱溶媒を促進し、イオン化効率を向上させた新ESIユニットと、コリジョンセル内のガス圧を最適化することでCID効率を向上させた新コリジョンセルUFsweeperIIIにより、従来機「LCMS-8040」から約6倍の感度向上を実現した。質量分析計において、一般的な高感度機では、イオンの導入口を大きくし、イオンの取り込み量を増やすことで感度を向上させているが、イオン取り込み量の増大は装置内の汚染につながるため、真空系を強化する必要があり、コストの増加につながっていた。「LCMS-8050」は「8040」のイオン光学系・真空系をそのままで高感度化を実現しており、耐久性およびメンテナンスコストの面で優れている。
また、「LCMS-8030/8040」の高速性をさらに強化し、最高3万u/sの超高速スキャン、正負イオン化切替時間5msecの超高速正負イオン化切替測定が可能になった。同社の超高速液体クロマトグラフ「Nexera」との組み合わせにより、分析のスループットが改善し、生産性を向上させた。また、測定イベント数の上限を512から1000に拡大。最大3万2000個(1000イベント×32ch)のMRM(Multiple Reaction Monitoring)を組むことができる。
さらに、ケーブルレス構造を実現した新規設計のイオン化ユニットで、ESI/DUIS、APCIイオン化ユニットの交換、脱着、日常のメンテナンス時の操作性を大幅に向上させた他、MRMに関する電気的なパラメータ(Pre rod電圧・コリジョンエネルギー)は「LCMS-8030/8040」と同一であるため、「LCMS-8030/8040」で作成したメソッドや各種メソッドパッケージをそのまま使用できる。
「LCMS-8030/8040/8050」のソフトウェアは、同社のLC製品「Nexera/Prominence」シリーズおよびシングル四重極型LC/MS「LCMS-2020」と完全に統合されており、それぞれの装置をまったく同じ操作感で使用できるため、トレーニング負担を軽減することができる。ソフトウェアは日本語・英語に対応している。
この他、定量対象成分数が増えても、成分ごとのMRM条件の最適化を自動で行うことができるので、熟練者でなくても装置の性能を十分に生かした高感度分析が可能なのに加え、イオンソースから真空系へイオンを導入する脱溶媒キャピラリーの取り付け・取り外しが、真空を停止することなく作業可能で、これまで丸1日かかっていたメンテナンスも数十分で復帰できるようになるなど、操作性とメンテナンス性を向上させている。
なお、価格は3250万円(税別)から。今年度は100台の販売を計画している。