新しい技術があらゆる業界で電光石火のごとく採用されているが、変わらないことがひとつある。それは、IT部門は新たなストレージのニーズに対し、従来型のストレージソリューションを使い応えると思われていることだ。効率的な通信に20年前の旧式電話機を使いたいとはだれもが思わないように、膨大な量のデータを保管するためにテープや専用ストレージ装置の採用をIT専門家に期待するのは現実的ではない。とりわけ、強大なクラウドコンピューティングの時代には、なおさらだ。
純然たる事実は、私たちがこれまで理解してきたように、ストレージ業界を崩壊しているキートレンドのせいで、今日のストレージに対するニーズを昨日のストレージソリューションで対処するのは不可能だということだ。
これらのキートレンドは次のようなものだ。
ビッグデータ:クラウドが支える世界では、データはますます大きくなり続けている。ガートナーは3つのV、つまり、増え続けるVolume(量)、Velocity(速さ:データの入出力スピード)、Variety(多種多様:データの種類や情報源の範囲)によって「ビッグデータ」を定義している。実際のところ、毎日250京バイトのデータが生み出されているとのレポートがあり、これは、世界のデータの90%がこの2年間に生み出されているほどだ。
テープによる保管はオンデマンド時代に企業が求める要件にますます合わなくなる一方で、とりわけ保管し続ける必要はあるが、めったにアクセスされないデータにとって、SANやNASのようなエンタープライズ用ストレージという伝統的なアプローチは、コスト高となりうる。しかしながら、利用者が膨大な量のデータを「オンライン」で、かつ手頃な価格で保管できるよう、オブジェクト・ベースのストレージシステムがエンタープライズ用ストレージの新分類として登場している。
クラウド:クラウドコンピューティングの普及に伴い、IT部門では企業のプライベートクラウド・ストレージ展開のアイデアを温めているところだ。彼らは、一般的にクラウドコンピューティングで得るのと同じ利便性、すなわち弾力性、簡単な管理、障害耐性があり汎用的なハードウェアをクラウドストレージで利用できることを期待している。残念ながら、伝統的なストレージ構造は、クラウドストレージへの期待に応えられない。
可動性:まさにビジネスマンが以前よりもたくさん動きまわるように、データもそうだというのは純然たる事実だ。現在、2種類の企業がある。「クラウドのなかで生まれ」て、すでにストレージに仮想的なアプローチを必要としている企業と、まさにクラウドに移ろうとしている企業だ。クラウドは、本質的に、データにとって真のコンセントになっている。相当数の情報源を行き来するデータを正しく利用できるようにする唯一の方法は、信頼でき、拡張性があり、経済的なクラウドストレージソリューションを構築し、クラウドそのものに(コンセントを)差し込めるようにすることだ。物理的な場所にしばられるストレージソリューションは、もはや機能しない。ストレージ・ソリューションはソフトウェアをベースとし、IT部門の特定ニーズと、多数拠点への対応に柔軟であることが必要だ。
Storage-as-a-utility(ストレージのユーティリティ化):事実として、技術はIT専門家をストレージの束縛から最終的に開放する手助けをするためにある。意外に難しいのは、率直に他の選択肢は無いのだから、ストレージのユーティリティ化は現実のものになるとIT専門家が信じる必要があるということだ。IT予算は、ストレージへの莫大な投資を簡単には許さないだろう。
良いニュースは、クラウドストレージ・ソリューションは、汎用サーバを使うプライベートやパブリッククラウドを構築するソフトウェアを実装しており、企業のビッグデータ・ストレージへのチャレンジを、いままさに手助けできるということだ。これらの新しい方法はITの関与を最小限にし、クラウド展開や管理のコストを劇的に削減する。そして結果として、ストレージのユーティリティ化を現実にする手助けをしている。
つまり、ビッグデータが爆発し続け、旧式ストレージシステムが崩壊し続ける一方で、私たちがこれまで知るストレージを再定義できる簡単なソリューションが市場にはある。これらのソリューションは、予算を垂れ流さない。事実、ソフトウェアと汎用ハードウェアで良く計画されたクラウドストレージソリューションは、実際のところ、他のプロジェクトにIT予算を振り向けることを可能にする。そして、最終的には、ヘトヘトになる保守よりむしろ、画期的なプロジェクトに予算を使うというIT専門家の夢を現実のものとするのだ。
Jay Desaiは、長年に亘りストレージ業界で活躍し、業界を代表するクラウドストレージソフトウェア会社のプロダクトマネジメントVPを担当している。