CEVAは8月7日、都内で「CEVAコンピュータビジョン&CEVAイメージエンハンスメントデイ」と題した会見を開き、同画像処理に特化したDSP製品の戦略などの説明を行った。

同社は各種アプリケーションに特化する形でDSPのIPをライセンス販売してきたが、2013年8月5日(米国時間)にはイメージ&ビジョン・プラットフォーム「CEVA-MM3000」向けアプリケーション開発キット(ADK)を発表するなど、コンピュータビジョン(CV)分野に向けた対応強化を進めている。

カメラで撮影された画像情報をリアルタイムで処理し、さまざまな付加価値をそこに加えるコンピュータビジョンは、現在、さまざまな分野で活用されるようになってきた。

日本シーバの代表取締役社長である日比野一敬氏

しかし、放送業界など、従来より映像を活用する分野が中心となって普及が進んできたが、それ以外の、例えば産業機器や自動車分野などでは「ようやく使えるようになってきた」(同社日本法人である日本シーバの代表取締役社長である日比野一敬氏)という。

また、2013年に入って、こうした画像処理に対し、「今までは誰がAPIなどを作って、どこのユーザーに提供するのか、といった状況だったのが、自らが対応していく、と語る半導体ベンダやアプリケーションベンダ、カメラモジュールベンダなどが国内でも多数でてくるようになった」とのことで、「問い合わせもかなり増加しており、こうした動きを追い風に、国内市場での採用実績を増やしていきたい」とする。

さらに、「DSPをソフトウェアで処理させることにより、CPUやGPUに比べてサイズを1/5~1/13、消費電力も1/10~1/20に低減することが可能となるほか、開発環境の整備に加え、数多くのソフトウェアパートナーなどのエコシステムの充実を図っており、例えばOpenCVの活用や超解像、顔認識などのソフトなどの自社開発品の提供なども可能となっている。ユーザーが自ら持っている画像処理のIPも高い技術を誇っており、それらを組み合わせてもらうことで、より最適化されたCV技術の活用が可能になる」とし、組込市場にビジョンアプリケーションの革命を起こしていくことを強調した。

CEVAのマーケティングバイスプレジデントであるEran Briman氏

そうした革命を起こす製品が、同社の第3世代のマルチメディアIPプラットフォームに位置づけられる第2世代DSPで、低消費電力に特化しており、携帯機器でのコンピュータビジョン活用を意識して開発されたIP「CEVA-MM3101」であり、「28nm HPMプロセスを用いた場合、動作周波数1GHzで、メモリ領域を含んでも0.67mm2のエリアサイズを実現することが可能」(CEVAのマーケティングバイスプレジデントであるEran Briman氏)なほか、「消費電力も視線検出や顔検出などの常時起動アプリの場合で5mW、ジェスチャ認識と手のひら追跡といったアプリで20mW、ジェスチャ認識と指追跡、顔検出と認識などのアプリであっても150mW未満と低く、バッテリの駆動時間延長も可能になる」とし、すでに2社のモバイルOEMベンダとアプリケーションプロセッサとしての活用に向けた契約が進められているとするほか、10社以上のソフトウェアパートナーとの連携が進められているとする。

CEVA-MM3101の概要と、適用分野のイメージ

8月5日に発表されたのは、ADKと、CEVA-MM3000シリーズの利用促進に向けて開発されたデジタルビデオスタビライザー(DVS)であり、このDVSはソフトウェア処理によるもので、ハードウェアアクセラレータを不要にすることが可能。そのため「ソフトウェアによるDVS処理は、同じDSPのダイエリアを使って、超解像、カラーエンハンスメントなどさまざまな機能を組み合わせて実行することが可能なほか、ハードウェアの特性に依存しないでアルゴリズムなどの更新による性能向上が可能であったり、センサごとのキャリブレーションを容易化することなどが可能だ」(同)とのことで、カスタマごとに容易に差別化を図ることが可能になるという。

CEVAーMM3101のプラットフォームの概要とDVSの概要

また、CMOSイメージセンサではプログレッシブスキャンによるJelloエフェクトが発生するが、DVSではローリングシャッター補正によって同エフェクトを打ち消すことができるほか、4軸の動き補正などが可能ながら、1080p@30fpsの動画で35mW以下(28nmプロセス利用時)の消費電力に抑えることが可能だという。

一方のADKはDSPでソフトを開発するうえで、アーキテクチャを抽象化することができるフレームワークであり、これにより開発者は自身のアルゴリズム開発に注力することが可能となる。OpenCV向けライブラリやRTOS、APIなどが含まれた統合開発環境で、OpenCVベースのCEVA-CVでは、OpenCV互換の600を超す関数を活用することが可能となっている。また、ビデオフレームの制御のための外部メモリとDSPの内蔵メモリを連動させ、データの分割・転送をすべて自動化することが可能な「SmartFrame」や、マルチコアシステムにおけるCPUからDSPへのオフロードを自動化することで、CPUだけをプログラミングしているような感覚で、DSP側に処理をさせることが可能となるドライバソフト「CEVA-Link」などを活用することで、エンジニアにそれほどDSPに関する知識がなくても、手軽にコンピュータビジョンの処理を実現することが可能になるとのことで、同社では、今後も対応関数を増やしたり、CVの各種機能の自社製品への搭載などを図っていくことで、組み込み分野におけるCVの普及・促進を図っていきたいとしている。

ADKの概要

なお、同社では、現在Khronos Groupが仕様策定を進めているOpenVXにも対応を図っていく予定としており、そうした最新技術への対応も進めていく計画としている。

CEVAが目指す組み込みCVの発展に向けたソリューションイメージ

CEVA-MM3101評価ボード。FPGAにCEVA-MM3101を組み込む形でCVを実現している