名古屋大学(名大)は、カーボンナノチューブ(CNT)のみでトランジスタや配線を構成した「全カーボン集積回路」を実現したと発表した。
同成果は、同大の大野雄高 准教授らとフィンランドのアールト大学のエスコ・カウピネン教授らによるもの。詳細は、英国の科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。
これまで研究グループは、CNTを用いた集積回路の研究として、透明なプラスチック上に高性能なCNT薄膜トランジスタや、それを用いた集積回路などを実現してきたほか、より高い柔軟性や伸縮性を実現することを目指して、配線材料や絶縁膜材料の探索なども行ってきた。
今回の研究では、電極・配線材料いもCNT薄膜を用い、また絶縁膜材料にアクリル樹脂を用いることで、柔軟で透明な全カーボン集積回路を実現したほか、全カーボン集積回路が立体形状に熱成型可能であることを確認したという。
具体的に実現された集積回路はリング発振器や各種論理ゲート、メモリ(SRAM)が含まれているほか、660nmのアクリル樹脂をゲート絶縁膜に用いていながらも、ナノ構造への電界集中効果を利用することで5V電圧で集積回路の動作を実現したという。
また、薄膜トランジスタの移動度は、一般的にプラスチック上に作製されたものは0.01~50cm2/Vsながら、今回、CNT薄膜の成膜技術について最適化を進めることで、1027cm2/Vsを実現したという。
さらに、開発された全カーボン集積回路において用いられた材料は、柔軟かつ高い伸縮性、そして熱成型技術により任意の形状に成型することが可能であり、今回の研究では、実証例として、ドーム形状に熱成型し、薄膜トランジスタや集積回路の動作確認が行われた。
この結果、トランジスタや配線は2軸方向に伸張されたが、CNT薄膜に亀裂や剥離などの問題は生じず、2軸方向に18%の伸張が施された場合においても正常に動作することが確認されたほか、集積回路においても7.2%の伸張まで正常に動作することが確認されたという。
研究グループでは、今回の成果を受けて、電子デバイスに熱成型を施すことができるようになると、プラスチック製品に電子的機能を容易に実装できるようになるほか、電子デバイスのデザイン性を広げることが可能になるとの期待を示している。