ヤフーは8月1日、スマートフォンアプリ作成サービスを提供するファストメディアとの業務提携を発表した。ファストメディアの持つスマートフォンアプリ作成ツール「Yappli」のOEMを受け、「Yahoo!アプリエンジン」として9月初旬から提供する予定。

ファストメディアは4月に、ヤフーの投資子会社であるYJキャピタルを引受先とする第三者割当増資を行なっていた。

Yahoo!アプリエンジンは、テンプレートからさまざまな機能をドラッグ&ドロップするだけで、簡単にiPhoneやAndroid対応アプリが作成でき、アプリの管理機能なども備えるコンテンツマネージメントシステム。Google Playなどのアプリマーケットへのアプリ申請も代行するという。

サービス利用料金は追って発表の予定。一部機能は異なるがYappliの料金プランはスタータープランが月額9800円、ビジネスプランが月額29800円(いずれも税別)となっている。

同日開催されたYahoo!プロモーション広告の広告主や代理店向けのイベント「Yahoo! JAPAN マーケティングソリューションカンファレンス」では、ヤフーの高田 徹氏が、同社の取り組みを紹介した。

高田氏はまず、「スマートデバイスがトレンドとなる中、ユーザーはいつでもどこでも情報に接することができるようになったが、一方でユーザーが消費できる情報量には限りがある」として、消費可能な量を超えた情報はユーザーはによって選別され見られなくなっており、これは「広告にとっても同じで、今まではうまくいっていたものが、うまくいかない」といった課題がマーケティングにおいても出てきていると指摘。

ヤフー マーケティングソリューションカンパニー ディスプレイ広告ユニット ユニットマネージャー 高田 徹氏

同氏は、ヤフーが取り組んでいるビッグデータ分析として先の参議院選挙の議席予測といった事例を紹介しつつ、マーケティングでもビッグデータの活用がこのような課題を解決するポイントだと続ける。さらに「意味のある分析を行うためには、事前の設計が必要不可欠」として、広告出稿やキャンペーンの実施といったマーケティングアクションを行う前の、「コンタクトポイントの設計やユーザー行動の分析が重要だ」と述べる。

とはいえ、デジタルマーケティングにおいては、マルチデバイス環境やユーザー行動の多様化によって、コンタクトポイントの設計や分析は複雑化し、企業にとって大きな負荷となってきている。特に、スモールビジネスにおいては、スマートデバイスでのコンタクトポイントが十分でなかったり、用意されていなかったりということも多い。スマートフォンでサイトを見てみたら、PCサイトがそのまま表示……といった例も多いだろう。

課題解決企業を掲げるヤフーは、これらに対して、URLを入力するだけでスマートフォンサイトを作成できる「スマホサイトビルダー」やサイト内の悪席解析タグなどの管理サービス「Yahoo!タグマネージャー」などを提供しており、今回発表した Yahoo!アプリエンジンもその一環となる。

この日のイベントでは、高田氏からYahoo!プロモーション広告そのものの話は出なかった。とはいえ、「マーケティングの課題解決をヤフーが提供」することで、このようなコンタクトポイントの設計や分析ができるようになったら、その次に出てくるのは広告出稿などのアクションだ。

企業の課題解決を図るとともに、アクションの機会を増やしていく。これがヤフーの戦略といえるだろう。実際、一定の条件はあるが無料で提供しているスマホサイトビルダーは、2月の提供開始からすでに数千のサイトで利用されているという。

ファストメディア 代表取締役 庵原 保文氏

イベントにはYahoo!アプリエンジンをOEM提供する、ファストメディアの庵原氏も登壇した。庵原氏は「アプリ市場はものすごい勢いで成長している」とするが、その一方でマーケティングではあまり成功していない面もあると述べる。

その要因として庵原氏は、「アプリの作成には(スマートフォンサイトなどのHTML/CSSとは異なる)スキルが必要で、プラットフォームごとの対応などが大変」「作成してもOSアップデートにあわせた更新など運用の手間がかかる」といった点を挙げ、総じてコスト面での課題を指摘する。

一方で、アプリの強みとして「(プラットフォームで提供される)アプリストアの集客力」「マネタイズ」「高い表現力やオンライン体験の実現」「レスポンス速度」「カメラなど高度な機能が使える」などを挙げる。

Yahoo!アプリエンジンは、前述の課題を「完全に解決したソリューション」で、企業に新たなメリトをもたらすものと庵原氏は自信を見せる。「非常に簡単にiOSやAndroidのアプリを作成でき、運用も楽」で、料金は明らかにしなかったものの「お安く利用できる」という。

機能面でも、通常のプッシュ通知に加えて、位置情報を活用し指定した範囲の◯◯◯m内に入ったら通知を行うGEOプッシュ、企業で作成した紙の広報誌などをベースに簡単に電子書籍を作成できる機能などを提供しており、企業の"マーケティングに活かせるアプリ"が作成できることが特徴となっている。

アプリでのプッシュ通知が行える。すでに提供しているアプリでは開封率23%という非常に高い結果も出ている

指定した範囲内にユーザーが入ってきた際に通知を送るGEOプッシュ機能も

なお、Yahoo!アプリエンジンについては今後、Yahoo!ウォレットなどの決済機能、Yahoo!地図の提供、Yahoo!タグマネージャーSDKへの対応によるアクセス解析機能などといったプラグインの提供も予定しているという。