アンケートやインタビューのようなかしこまった場ではなかなか聞けない、ユーザーの何気ない会話からトレンド動向や自社に対する評価を聞けるのはソーシャルメディア活用の魅力のひとつですよね。そんな声を元に、ファンと「共創」してみたいと思いませんか?
皆様こんにちは。アライドアーキテクツ株式会社 ソーシャルメディアマーケティング事業第一本部の藤田雅志です(実は社内に「藤田」が3人もいて、当メディア運営責任者も「藤田」です…笑)。
今やソーシャルメディア上に溢れるユーザーの本音は、消費者心理や購買行動を知ることのできる格好の材料。
しかし実際には、「ソーシャルメディア運用と他の業務を兼務していて、ユーザーの声を全て拾う手間や時間を掛けられていない」、そもそも「自社の情報発信がメインで、あまりユーザーのコメントにまで目を向けていない」という方も少なくないのではないでしょうか?
そこで今回は、「インターネットリサーチ」×「ソーシャルメディア」というテーマで、ソーシャルメディアマーケティング施策の一環としてオススメする、リサーチのソリューション(以下ソーシャルリサーチ)についてご紹介します。
マーケティングの変遷によるリサーチ手法の変化―インターネットリサーチの登場―
既にご存知の方も多いとは思いますが、現代までのマーケティングには3つの局面があるといわれています。
マーケティング1.0 良いモノを作れば売れる時代(マーケティング4P主体)
マーケティング2.0 インターネットの普及/消費者中心の時代(検索エンジン)
マーケティング3.0 ソーシャルメディア・スマートデバイスの時代
マーケティング1.0の時代のリサーチ方法はインターネットも普及しておらず郵送や電話などを使ってアンケート・インタービューを行っていました。
色々な意見はありますが、基本的には「一方的に聞きたいことを聞く(ASK)」と「膨大な調査コスト」が大きな課題で、調査設計を超えたインサイト(発見)を得られることが難しいとされてきました。
マーケティング2.0の時代になってインターネットリサーチという手法が出現してきており、現在のリサーチ方法の中で毎年確実な伸びを示しているようです。
色々な課題はあるようですが、現在でもインターネットリサーチの活用は伸びております。その中で、基本的にインターネットリサーチの出現により解決された課題は、
・調査コストが軽減された
・時間・場所の制約がなくなり広く多くのサンプリングデータの収集が可能となった
この2つです。
一方、モニターバイアスや回答の信憑性などの課題も発生しており日々研究がすすめられています。
ソーシャルメディア、ビッグデータの台頭による変化
そして、マーケティング3.0の時代に突入し、重要なマーケティングテーマは「ソーシャルメディア」「スマートデバイス」「ビッグデータ」といったキーワードになりつつありますが、何が大きく変わるのでしょうか。
従来のインターネットリサーチ=アンケートの限界
ソーシャルメディアの普及に伴い各社がマーケティング施策を検討するためにクチコミデータを収集分析(リスニング)し発見(インサイト)を得る動きが出てきました。
私は良く「アンケートは左脳データを収集する、リスニングは右脳データを収集する」という言い方をします。
従来のインターネットリサーチでは、基本的にはアンケートが主体で、そこから得られるデータは論理的思考データだと思います。
しかし、インターネット上には様々なコミュニティが存在し、ソーシャルメディア上に膨大な書き込みデータが存在します。
何が本音で何が嘘なのか、ひょっとしたら投稿した本人ですら意識しない状態かも知れませんが、データ価値としては無視できないと思います。
さらに、リサーチそのものは何かの目的があってデータ収集・分析をするものだと思いますが、その先にある「コミュニケーション→ブランディング」という視点で考えた時にリサーチのあり方を再点検する必要はありそうです。
リサーチのその先に・・・MROC
みなさん、様々な目的を持ってリサーチを行っていると思います。
「自社のブランドは他社と比較してどう評価されているのだろう・・・」
「自社の商品サービスを購入した(体験した)消費者はどうかんじているのだろう・・・」
「せっかく回答してくれた人達と今後も継続的につながってファン化したい・・・」
こうしたソーシャルメディアが普及してきた流れから生まれた新しい概念に、
MROC = Market / Marketing Research Online Community
という概念が生まれてきました。MROCとは、オンライン上に自社専用のコミュニティを立ち上げ、一定期間(1~2カ月程度)「生活者×生活者」、「企業⇔生活者」の対話の場を設定。対話の内容からマーケティングのヒントを探るアプローチです。
つまり、
・コミュニティを形成する
・アンケートでもリスニングでもなくコミュニケーションを通じてヒントを探る
という点が大きく異なる点です。
どんな事例があるのか見てみましょう。
MROCの成功事例
【クラフトフーヅ/”100キロカロリーパック”の開発】
主力のクッキー・スナック市場で「ナビスコ」「オレオ」などの人気ブランドを持つクラフトフーヅですが、消費者の健康志向などの影響で低迷に悩んでいました。この市場でのビッグアイデアを求めるため、女性300人からなるMROCを構築。参加者の半数はダイエット希望者、残り半分を“健康おたく”のオピニオンリーダーとしたそうです。
二つのグループ間の豊富な意見交換の結果誕生したのが、”100キロカロリーパック”。「健康を意識しながら、甘くてカロリーの高いクッキーやクラッカーも食べたい」という要望を叶えるべく、はリッツやオレオといった既存製品を、総カロリー数が100kcalになるようにパック詰めして売り出したものです。
狙い通りこの商品は、初年度売上高が1億ドルに達するヒットとなりました。
【グラクソ・スミスクライン(GSK)/ダイエット薬「アライ」プロモーション】
ダイエット薬「アライ」発売にあたり、プロモーション展開のためにMROCを活用。
インサイト発見のための「第1フェーズ」、商品パッケージやWEBサイトへの意見を求める「第2フェーズ」に加え、プロモーションに向けた「第3フェーズ」でもMROCを実施しました。この第3フェーズでは、参加者にモニターとして商品や関連ツールを使ってもらい、クチコミを広めたそう。
結果、最初4カ月間でスタータキット200万個を完売するという成功を収めました。
参考:佐野 紳也氏「ソーシャルメディアを活用した消費者調査の最新手法早わかり『MROC成功のカギ』」
日経消費ウオッチャー 2012年2月
https://dl19w3jlhkm4w.cloudfront.net/2012/MROC_PDF.pdf
【ナイキ/Nike+】
Nike+は、独自コミュニティやFacebookなどを通じ、走行記録をアップデートしながら、仲間との競争やゲーム性のある目標設定、そしてコミュニティのリアルイベントなど、毎日のランニング(やウォーキング)のモチベーションを強化するさまざまな仕組みを提供しているランナーズコミュニティ。
ナイキは今日では、こうしたコミュニティ運営に実にマーケティング予算の半分以上を投下するほど注力しているようです。
ほかに、米国スターバックス「My Starbucks Idea」、米国DELL「Ideastorm」、無印良品「くらしの良品研究所」などに代表されるユーザーサポートコミュニティの発展形も、ソーシャルメディアの特性(対話性や参加者による投票/選抜など)を生かしたコラボレーション型のマーケティングプロセスを実現しています。
参考:「スタバ、ナイキ、ユニクロやベネッセなど、顧客と新次元のコラボレーションに取り組む理由とは」
日経BizCOLLEGE 2011年11月
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20111027/288775/?ST=career&P=1
まとめ
MROCだけがソーシャル時代のリサーチ手法の唯一の正解ではないですが、消費者とブランドを共創していく時代にフィットした手法の1つではあると思います。
マーケティング、リサーチ業務担当者は「いかに聞きたいことをうまく聞くか」「消費者の本音をうまく引き出すか」といった質問設計や分析方法だけでなく、「本音を引き出すための雰囲気づくり」「ユーザーとの信頼関係醸成」を目指すコミュニティ形成、コミュニケーションが重要になるのではないでしょうか。
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