セキュリティソフトといえば、ノートン、カスペルスキー、ウイルスバスター、マカフィーといった有名なソフトを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、Androidで提供されているセキュリティソフトでは、Lookoutという無料アプリが一定のシェアを獲得している。
2007年に米国で設立されたLookoutは、Androidスマートフォンに特化したモバイルセキュリティソフト開発会社。世界170カ国、11言語で利用されており、現在のユーザーは4000万人を超え、日本語版ユーザーも100万人を突破したという。
品質の面でも世界でトップクラスの評価を得ており、海外の携帯電話事業者(米T-Mobile、仏Orange、豪Telstraなど)では、自社で提供するAndroid端末にLookoutアプリをプリインストールしている例もある。
日本のモバイルマルウェア感染率は低いが…
Lookoutでは、アプリ利用者から送信されたデータをもとに、世界におけるモバイルマルウェアの感染率を推計している。米Lookout国際製品担当ディレクターの阿久津 みか氏は「日本のモバイルマルウェア感染率は、世界と比較して低い水準だ」と語る。
イギリスやイタリア、ロシア、中国などの国々ではマルウェア感染率が1%を超えている中で、日本の感染率は0.2%未満という数字にとどまっているという。
しかし、日本人を狙ったマルウェアが決して存在しないわけではなく、Lookoutでは「Eneoutsy」、「LoozFon」といったマルウェアを実際に検出している。
例えば「LoozFon」は、高い配当をうたう「くじ引き」アプリで、アプリ内のリンクを踏むことでくじ引きを行うが、必ず外れてしまう仕組みになっている。そのリンクを踏む際に、連絡先を盗み取り、外部サーバーへと情報を送信するのだという。
Androidマルウェアの特徴としては、それぞれが独特な動きを見せるものが少ない。共通の悪質コードを利用している「ファミリー」というマルウェア群が非常に多く、Lookoutではパターン照合によってマルウェアを特定している。
パターン照合を行う「マルウェアデフィニションリスト」は、数日~1週間程度のスパンで定期的にアップデートが行われるため、最新のマルウェアにも迅速に対応できるという。
マルウェア対策だけではないLookout
これまで説明してきた従来型のマルウェアブロックだけではなく、スマートフォンではプライバシー管理もセキュリティソフトが持つ重要な役割の一つだ。
Lookoutによると、世界では3秒に1台の頻度でスマートフォンが紛失されており、その数は年間合計で約1000万台にも達する。スマートフォンを紛失したユーザーにとって、一番の心配は「端末に保存された個人情報データが悪用されないか」という点だと思われる。
Androidスマートフォンには「パターンロック」や「パスワードロック」が設定項目に入っているものの、端末を起動するたびに入力するわずらわしさなどから設定していないユーザーも多いという。
その点では、Lookoutアプリを利用することで、普段からロックをかけていない端末でもリモートロックができるほか、「ワイプ」と呼ばれる機能を利用してスマートフォンデータの削除も可能だ(共に有料のプレミアム機能)。
無料機能でも、PCやスマートデバイスのブラウザから端末がどの場所にあるか調べることができるほか、マナーモード中でも大音量で警報を鳴らす機能があり、近くに居る人に端末の場所を知らせることができる。
独自機能として面白いものが「シグナルフレア」と「ロックカメラ」。
「シグナルフレア」は、スマートフォンの電池が切れる直前にデバイスの位置情報を自動的に登録メールアドレスへと送信する。これによって、端末の電池が切れた場合でも発見できる可能性がグッと高まるわけだ。
一方、「ロックカメラ」は、端末をパスワードなどでロックしていた場合に、3回以上パスワードを間違えた瞬間、ロック解除を行っていた人を撮影して登録メールアドレスに画像を送信する。ただし、「撮影画像に写っている人は、スマートフォンユーザー自身のケースが多い」(阿久津氏)といい、自分自身でパスワードを忘れない対策も重要なのかもしれない。
同社では、「認知度が大手ベンダーなどに劣るため、できる限り多くの人に利用してもらう」(阿久津氏)ためとして、機能の大半を無料で提供している。
一方、プレミアム版として悪質サイトをブロックする「セーフブラウジング機能」や、プライバシー保護機能などの一部機能を、月額250円、年額2500円で提供している。
スマートフォンセキュリティを総合的に管理したいユーザーには、おすすめできるアプリに仕上がっているといえるだろう。