米IBMは7月25日(現地時間)は7月25日、Androidを搭載したスマートフォンやタブレットのユーザーは、自分の端末で余っている演算処理能力を科学の進歩のため寄付できるようになったと発表した。
寄付された演算処理能力は、IBMのワールド・コミュニティ・グリッド(World Community Grid)や、Einstein@Homeプロジェクトの研究者たちが新しい医療・治療法開発や未知の電波パルサー探索を推進するのに活用される。
これまでのボランティア・コンピューティングは、デスクトップやノートパソコンなどの従来型のコンピューター機器を使用していたが、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器の演算処理能力とエネルギー効率は向上しており、台数も非常に増え、現在、Android搭載機は約9億台にのぼり、その演算処理能力を合わせると最大規模の従来型スーパーコンピューターの能力を上回るほどになっている。
こうした機器がボランティア・コンピューティングに参加できるようにするため、カリフォルニア大学バークレー校が開発したボランティア・コンピューティング用ソフトウェア、Berkeley Open Infrastructure for Network Computing(BOINC)が最新バージョンとなり、Android 2.3.3以上を搭載する機器を持っていれば、Google PlayサイトからBOINCをダウンロードして貢献したいプロジェクトを選び、市民として科学の推進活動に参加できるようになった。
Androidベースのボランティア・コンピューティングにより参加できる最初のプロジェクトのひとつが、ドイツ・ハノーバーのマックス・プランク重力物理研究所(Max Planck Institute for Gravitational Physics)が率いる未知の電波パルサー探索プロジェクト、Einstein@Home。Androidユーザーは、プエルトリコのアレシボ天文台にある世界最大の電波望遠鏡からのデータを解析するアプリケーションに演算パワーを提供、このアプリケーションは電波パルサーから出るパルス電磁波を検知して電波パルサーを見つける。
パルサーは非常にコンパクトな恒星のかけらで、通常の物体に比べて極端な物理特性を持ち、この中には伴星のすぐそばを周回し、アインシュタインの一般相対性理論を証明するユニークな試験台となっているものもある。しかし、新しいパルサーを発見するための感度は、その演算処理能力の制約を受ける。演算処理能力が高まればEinstein@Homeの探索活動を加速し、感度を高めることができ、科学者たちは星や宇宙の進化の道筋を理解しやすくなり、ボランティアはAndroid機器を使って新しい電波パルサーの発見に貢献できる。
Android搭載のスマートフォンやタブレットで参加できるもうひとつのプロジェクトが、 IBMのワールド・コミュニティ・グリッドで展開されているFight AIDS@Home。このプロジェクトは効果的なエイズ治療薬の研究を目的として、スクリプス研究所にあるオルソン教授の研究室により進められている。ヒトを死に至らしめるエイズ・ウイルスが機能し、拡大していくためにはHIVプロテアーゼ、HIVインテグラーゼ、HIV逆転写酵素という3つの酵素が必要になるが、Olsen教授らはこれらの酵素をブロックできる形状と化学特性を持つ新しい候補薬を特別な計算手法により特定しようとしている。
IBMのワールド・コミュニティ・グリッドは今後、Android対応のプロジェクトを増やしていく。