アドビ システムズが提供している映像編集ソフト「After Effects」。同ソフトには多くのプラグインソフトが存在し、プロの映像クリエイターたちの多くはそれらを巧みに使いながら、人々を驚かせるような洗練された映像を世に送り出している。そんな映像制作に欠かせないプラグインの重要性について、映像制作などを手掛けるプロダクション「flapper3」の代表取締役 中村圭一氏とデザイナー 山本太陽氏に聞いた。

プラグインの役割と必要性

株式会社flapper3 代表取締役 中村圭一氏(左)、デザイナー 山本太陽氏(右)

「プラグイン」とは、完成されたソフトウェアに後付けで機能を追加するためのプログラム。「アップデータ」とは違って、ソフトウェア本体を変更することなく機能の追加や削除が行え、ソフトウェア本体を販売している会社とは別のサードパーティからリリースされることが多い。

After Effectsのような映像制作ソフトでは、映像にエフェクト(視覚効果)を加える機能を追加するプラグインが数多くリリースされており、そのなかでも「Trapcodeプラグイン」は、その代表的なプラグイン製品と言える。

「Trapcodeプラグイン」はTrapcode社がリリースしている各種プラグインの総称で、「Trapcode Particular」や「Trapcode Shine」など10種類のプラグインがあり、それらをまとめた製品として「Trapcode Suite」が販売されている。After Effects本体にもエフェクトを加える機能は搭載されているが、なぜそれらのプラグインが必要なのかを尋ねた。

山本氏:プラグインを使うメリットには2種類あり、ひとつはAfter Effects単体ではなし得ない映像が作れることです。もうひとつは、After Effects単体で作れるけれども、プラグインを使うことで圧倒的な時間短縮が行えることですね。「Trapcodeプラグイン」では、前者が「Trapcode Mir」、後者が「Trapcode Shine」に相当します。また、空気中の塵や光のラインを表現するために「Trapcode Particular」をよく使っていますが、このプラグインも他のものでは替えが効きかないので必要不可欠ですね。

中村氏:いろいろなプラグインが存在する中でも、「Trapcodeプラグイン」はメインとなるプラグインのひとつですね。映像制作を行っているプロであれば必ず持っていると思いますし、本格的に映像制作を始める人は持っていた方が良いと思います。

『Trapcode Creative Award 2013』とは

Trapcode Creative Award 2013

フラッシュバックジャパンではそんな「After Effects」の代表的なプラグインである「Trapcodeプラグイン」を用いた作品を募集する映像コンテスト『Trapcode Creative Award 2013』を実施する。コンテストの対象は、「Trapcodeプラグイン」(ホストアプリはAfter Effects)を1製品以上使った映像作品(15秒:1,920×1,080/30p)で、応募資格は日本在住ならプロ/アマチュアを問わず、個人もしくはグループにつき1作品まで。そして、募集作品のテーマは「Japan」となっている。

エントリー受け付け期間は8月5日~20日で、PDF形式の応募要項が同コンテストのWebサイトにて配布されている。なお、作品の応募方法は後日の発表となっており、9月に東京で開催予定のセミナーの詳細も追って発表される予定。

コンテスト参加者に向けたアドバイス

今回取材に訪れたflapper3は、同コンテストのプロモーション映像を募集作品と同じテーマ、フォーマットにて制作している。Trapcodeプラグインを活用した作品を制作した立場から、これから作品制作に取りかかる人に向けたアドバイスを聞いてみた。

山本氏:「Japan」というテーマで和柄などの分かりやすいイメージではヒネリが無いと考え、私たちの作品では、漆器をイメージした黒と赤と金の色を組み合わせて日本らしさを出そうとしました。使用したプラグインは、「Trapcode Particular」と「Trapcode Form」がメインです。アイデアがあっても完成させなければ意味がありませんから、思いついたらすぐに取りかかった方が良いかもしれません。

中村氏:制作時間は条件にもよりますが、今回の作品は3DCGの制作もあったので、15秒の作品でもかなりの時間を費やしています。作業環境を整えるなら、「Trapcodeプラグイン」はマルチコア対応なので、CPUのコア数が多いパソコンやワークステーションの方が有利ですね。しかし、性能が良いからといって安心するのは危険です。一番多い失敗は、レンダリングが間に合わなかったり、処理が重すぎてパソコンが止まったりすることです。最後までレンダリングを行わないでいると、どれくらいの時間がかかるのか分からないので、途中でテストも兼ねて何度か実行し、自分の環境と制作物の処理時間を把握しておくことが大切だと思いますね。特に今回は、解像度も高いので注意してください。

どんな作品が見たいか、面白いと思うのか

最後は、おふたりに今回のコンテストでどんな作品を見てみたいのか、またどういった作品が応募されてきたら面白いと思うのか、という質問に答えてもらった。

山本氏:「Trapcodeプラグイン」は、設定次第で予想もしなかった視覚効果が得られることもあります。普段は滅多にしないような設定で、どんなプラグインを使ったのか分からないほど突き抜けた作品や、ヒネリが利いた作品が出てくると面白いですね。

中村氏:今回のコンテストでは、10種類のプラグインが対象になっていますが、使用頻度の高い「Trapcode Particular」や「Trapcode Shine」、「Trapcode Form」、「Trapcode Mir」以外のプラグインを使った作品が出てくると、興味深いですね。

定番のプラグインを一般的な設定で使用すると、似たような作品の中に埋もれてしまう可能性が高い。しかし、人とは違った使い方や設定を駆使したり、ユニークなアイデアさえあれば、初心者であっても低スペックのパソコンでも、面白い作品ができるはず。まずは、「Trapcodeプラグイン」のデモ版をダウンロードして、アイデアを練ってみてはいかかだろうか。