新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、次世代太陽光発電システムの主力とされる「有機系太陽電池」の早期実用化を目指して、実際の使用環境下での発電量や耐久性などを検証する実証試験を国内メーカーとともに京都市や仙台市、島根、奈良、千葉の各県で開始したことを発表した。

有機系太陽電池は光の吸収層(光電変換層)に有機化合物を用いた太陽電池で、「色素増感太陽電池」や「有機薄膜太陽電池」などがある。これらは従来のシリコン太陽電池よりも変換効率は劣るが、少ない光で発電でき、大幅な低コスト化や軽量化も見込まれる。有機系太陽電池については、海外メーカーが近年、相次いで有機系太陽電池の生産投資に踏み切っており、日本のメーカーにおいても市場参入を急ぐべき状況にあるという。

このうち色素増感太陽電池は、光エネルギーを吸収する色素と酸化チタン光電極などを光電変換層としたもので、パネルに絵を描いた色素増感太陽電池と蓄電池・LEDライトを組み合わせた「デザインソーラーランタン」を日本写真印刷(株)が開発し、京都市国際交流会館と京都市美術館の敷石として利用する実証実験を始めた。また同社は島根県産業技術センターとともに、シースルー(半透明)性の色素増感太陽電池を取り付けた「独立電源型広告掲示板」を製作し、島根県内2カ所(「テクノアークしまね」「くにびきメッセ」)で実証実験をスタートさせた。

さらに色素増感太陽電池は太陽光の入射角や光量に依存性が少ないことから、住宅や工場などの壁面や北側の日射量の少ない場所でも発電が期待される。この特長を利用し、シャープ(株)は“高電圧型”色素増感太陽電池を製作して奈良県・葛城工場に設置し、(株)フジクラは“高電流型”色素増感太陽電池を千葉県・佐倉事業所に設置して、それぞれ実証試験を始めた。

有機薄膜太陽電池は、導電性ポリマーやフラーレンなどを混ぜ合わせた有機薄膜半導体を光電変換層とするもので、「薄い」「軽い」「曲がる」「高いデザイン性」などの特性がある。三菱化学(株)は、仙台市震災復興計画に定める「持続的なエネルギー供給を可能にする省エネ・新エネプロジェクト」とも連携し、今年度は「スリーエム仙台市科学館」でシースルー性のある有機薄膜太陽電池を“発電するサンシェード(日よけ)”として利用し、太陽光発電と日射熱のカットによる省エネ効果などを検証するという。

(左)日本写真印刷(株)が開発した「デザインソーラーランタン」(京都市国際交流会館)
(右)三菱化学(株)が開発した「発電するサンシェード」

シャープ(株)葛城工場に設置された色素増感太陽電池(下側)。上側は比較用の既存の太陽電池

(写真提供:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))

関連記事

ニュース【軽くて曲げられるCIGS系太陽電池開発】

ニュース【有機薄膜太陽電池の効率よい作製法開発】