サイボウズは7月16日、同社が提供するクラウド基盤「cybozu.com」上で展開するビジネスアプリ基盤「kintone」のアップデートを発表した。
新たに企業間コラボレーション機能「ゲストスペース」、およびカスタマイズ開発機能「JavaScript読み込み」を追加。カスタマイズ開発に役立つAPIなどの技術情報を提供するWebサイト「cybozu.com developers」も公開している。
情報共有を促進するビジネスアプリ作成基盤
サイボウズ 代表取締役社長の青野 慶久氏 |
発表会では、サイボウズ 代表取締役社長の青野 慶久氏が登壇。kintoneの概要や、ユーザー事例について紹介した。
kintoneは、2011年11月より提供されているクラウドサービス。データベース、ワークフロー、コミュニケーションの3つの機能を備え、GUIにより簡単かつ迅速にアプリケーションを構築できるという特徴がある。
青野氏は同サービスの提供背景について、「16年間グループウェアを提供してきたが、画一的なアプリケーションでは、各企業の個別のニーズを満たせないケースがある。例えば、飲食店のシフト管理システムがほしいと言われた場合に、使い勝手のよいものはなかなか提供できない」と説明。そうしたニーズに応えるべく提供を開始したのがkintoneであることを明かした。
さらに青野氏は、kintoneが備えるデータベース、ワークフロー、コミュニケーションについて、「業務アプリケーションに不可欠な3要素」と紹介。データベースだけを提供するサービスも少なくないが、「業務アプリケーションを何のために利用するのかと考えると、『チームで何かを成し遂げるため』という答えになる。そのためには、ワークフローやコミュニケーションの機能が必要。例えば、契約書の管理アプリを作っても、単に契約書を保管/表示できるようにしておくだけでは、メールなどのツールを併用することになり、業務効率はそれほど高まらない」と説明し、必要な機能をすべて備えるkintoneは既存のジャンルでは分類できない「チームワークプラットフォーム」になると主張した。
kintoneの活用事例
発表会ではkintoneの事例も紹介された。
特徴的だったのが、障害児向けの訪問看護事業を展開する株式会社 関西の事例。以前は、看護内容の報告を紙の日報で行っていたが、同社はそれをkintoneによってWebアプリ化。写真を添付して状況を細かく報告できるようになったうえ、家族側もPCやスマートフォンを使ってどこからでも日報を閲覧可能になり、利便性が高まったという。
さらに、以前は、看護師がコミュニケーションをとる相手は母親のみであるケースがほとんどだったが、日報をWeb化した結果、父親や祖父母とも情報共有できるようになった。また、医師による経過観察中の児童に関しても、Webの日報で医師が確認できるため、フォローが手厚くなったという。
青野氏はこうした効果を振り返り、「児童を看護するチームが広がった」と説明。チームワークプラットフォームを体現する例と強調した。
そのほか、発表会では、空港や建築業、医療において、情報共有を迅速化した事例も紹介。最近では、農業においてセンサーから送られてきた温度や湿度などのデータを管理するM2M(Machine to Machine)の事例も出てきているという。
ゲストスペースで情報共有がさらに簡単に
今回発表された新版では、12の機能改善と2つの新機能が追加されている。そのなかでも、発表会において特に強調されたのが、「ゲストスペース」と呼ばれる新機能だ。
ゲストスペースは、利用可能な機能を限定した"ゲストユーザー"を作成できる新機能になる。情報を確認したり、スレッドを作成/管理したりすることはできるが、アプリの作成/管理やゲストの招待、モバイルからのアクセス、全文検索などは実行できないようになっており、外部の関係者と情報共有する際などに有効という。
一方、JavaScript読み込み機能は、独自に作成したJavaScriptコードをkintone内に取り込めるようにするもの。条件書式や自動裁判、経過年数の自動計算など、ユーザーが必要な機能を自分で開発できるようになっている。
これらの機能は7月14日にリリース済み。すべてのユーザーが利用できる。