取引先などにファイルを送りたいとき、ほとんどの人はメールの添付機能を使っていることだろう。ところが、大きなファイルになると容量制限に引っかかることも多く、そうした際には外部のインターネットストレージ・サービスなどを使用せざるを得ないのではなかろうか。これは、セキュリティ上大きな問題だ。また、ファイルのサイズや送信相手によって送付方法を変えなければならないというのも、ユーザーにしてみれば非常にわずらわしい。そうしたなか、メールの利便性と、社内設置のファイル大容量転送システムの安全性を「いいところ取り」したのが、NTTソフトウェアが7月11日に発表したメール誤送信防止ソリューション「CipherCraft/Mail(サイファークラフトメール)」の新バージョンである。このソリューションの概要を紹介するとともに、ユーザーと企業それぞれにもたらされるメリットについて検証しよう。

ファイル共有にまつわるセキュリティと内部統制の課題を解決

仕事でITの利用が当たり前となった現在、様々なビジネスシーンで外部とのファイル共有が行われている。社員が外部にファイルを転送する際に最も多く使われているのが、メールへの添付だ。ただし、昨今は業務で扱うファイル容量が大きくなっているにもかかわらず、多くの企業では添付ファイルの最大容量を3MBや5MB程度で制限している。そのため、社員が無償のインターネットストレージ・サービスを勝手に利用したり、USBメモリやDVDなど物理媒体に記録して送付するといった手段をとるようになってきている。

しかし、本来は個人向けであり、社外のサービスであるインターネットストレージ・サービスでは、大切な仕事のデータのやり取りに十分なセキュリティを確保できるとは言えない。USBメモリなどの送付にしても、情報漏えいや紛失の危険性は決して小さくはない。情報漏えい事件が頻繁に起こり、その対策が叫ばれているなか、このようなファイル共有の現状はセキュリティや内部統制の面からも企業としては看過するわけにはいかないだろう。

そこで、ユーザーがいつも使用している電子メールソフトで、大容量ファイルでも普段のファイル添付と同じ操作性で送信できるようにしたのが、今回発表されたCipherCraft/Mailの新バージョンなのである。

このソリューションの仕組みは次のようなものだ。まずユーザーがファイルを添付してメール送信する際に、誤送信を防ぐための画面がポップアップして内容の確認を行う。その後、システム側はメール本文から添付ファイルだけを切り離してファイルサーバーへと保存し、自動的に暗号化を行う。送信するメールの本文中に、ファイルをダウンロードするためのURLが自動的に埋め込まれて相手に送られる。また送信者には、サーバーに格納されたファイルのダウンロードのためのパスワードが送られるので、それを相手に別のメールで通知。送信相手は、ブラウザでURLにアクセスし、送られたパスワードを入力すればファイルを受け取ることができるのである。

ユーザーにしてみれば、ファイル送付とそれにまつわる文章でのやり取りなどのすべてをメールに一本化できるため、操作や管理の利便性が向上する。一方の管理者側も、添付ファイルが自社の管理するサーバー上に自動格納されるためにセキュリティを大幅に強化できる。さらに、「誰が」、「いつ」、「どのようなファイルを」送付し、「誰が」、「いつ」ダウンロードしたのかといった証跡を残せるため、内部統制の強化や監査対応も図ることができるのである。

メール誤送信防止と大容量ファイル転送、2つのソリューションの“タッグ”で誕生

今回の大容量ファイル添付機能は、CipherCraft/Mailのオプションとして提供されるもので、NTTソフトウェアのメール誤送信防止ソリューションであるCipherCraft/Mailと、NSDビジネスイノベーションの大容量ファイル転送システム「eTransporter(イートランスポーター)」の連携によって実現した。

CipherCraft/Mailは、2003年10月に世界最高水準の暗号強度を誇る「Camellia(カメリア)」を搭載した暗号化製品として発売を開始。2007年11月よりメール誤送信防止機能を強化し、目下メール誤送信防止市場において6年連続シェア1位(株式会社ミック経済研究所 2013年5月発行『情報セキュリティソリューション市場の現状と将来展望2013【内部漏洩防止型ソリューション編】』)を達成している。メール送信の際に誰が承認したかの証跡を残せる上長承認機能などの詳細なルール設定をはじめメールの安全性にかかわる充実した機能を備えている。

一方のeTransporterは、あらゆる種類のファイルを簡単・安全に送信することができる企業向けファイル転送システムであり、シンプルで使いやすいインターフェースや、管理・セキュリティ機能の豊富さ、サーバーライセンスによるコストメリットといった特徴を持つ。

CipherCraft/MaileとTransporterの連携イメージ

どちらのソリューションも、オンプレミスで運用するソフトウェア製品であり、自社のニーズに合わせた柔軟なカスタマイズが可能となっている。また、いずれも大企業や官公庁を中心に数多くの導入実績を誇る。

NSDビジネスイノベーション 営業部 課長 櫻井俊宏氏

両社のパートナーシップについて、NSDビジネスイノベーション 営業部 課長の櫻井俊宏氏は次のように語る。「eTransporterのお客様からは、せっかくファイル転送の仕組みを導入してもユーザーは使い慣れたメール添付からなかなか離れられない、といった声をよく聞いていました。また管理面からも、メールに一本化したほうが効率的だという意見もいただいております。そこで、eTransporterと連携できる仕組みを探していたところ、誤送信防止の分野でナンバーワンであり、メール自体のセキュリティも高めたうえで管理を一本化できるCipherCraft/Mailならば最適だという結論に達したのです」

NTTソフトウェア ソリューション事業推進本部 セキュリティ・ソリューション事業部 セキュリティビジネス推進部の営業担当主任、石川理絵氏も、「CipherCraft/Mailのお客様からは、大容量のファイルもメールで安全に送付したいというニーズが高まっていました。会社に内緒で外部のインターネットストレージ・サービスを使用している社員も多く、何か対策したいという思いが強いようです」と語る。

NTTソフトウェア ソリューション事業推進本部 セキュリティ・ソリューション事業部 セキュリティビジネス推進部 営業担当主任 石川理絵氏

CipherCraft/MailとeTransporterを組み合わせたこのソリューションは、NSDビジネスイノベーションの親会社であるNSDが“ファーストユーザー”として導入を予定している。導入理由は、単に子会社の製品だからということではなく、ファイル共有とメールセキュリティの両面から効率良く対策が行える点を高く評価したからだという。

現在、外部とのファイル共有について不便に感じている社員や不安を抱いている管理者は数多く存在しているに違いない。そうした人々にCipherCraft/Mailの大容量ファイル転送機能は、具体的な解決策を示すものとなることだろう。