パナソニックグループのSiM24は7月12日、サーマルデザインラボ、名古屋市工業研究所と共同で、電子部品の発熱量を、高精度で計測できる電子部品発熱量測定システム「PM-100」を開発した発表した。2013年8月より受注開始する。

近年、エレクトロニクス機器の小型化や電子部品の高速化・高機能化によって発熱密度が増加し、放熱が難しくなりつつある。このため、初期段階で熱流体解析を用いて温度を予測し、設計を最適化していくシミュレーションベースの設計が普及してきている。一方で、電子部品の小型化、多ピン化が進み、電流の計測が困難となっている他、半導体の微細化により、発熱量のバラつきや温度依存性が高まっているため、シミュレーションの入力データとして欠かせない部品の発熱量の把握が難しくなっている。高密化に伴う各部品からプリント配線板への放熱量も増加しているが、その量の計測は困難という。また、発熱量の把握が難しいコイルやコンデンサ、バッテリーなどの部品も増えている。

こうした様々な要因により、発熱量の誤差が増え、シミュレーションの温度予測精度も低下している。この結果、試作を行ってから熱対策を行う、後追い型の設計スタイルに逆戻りする傾向にある。

そこで今回、トータルサーマルエンジニアリング(TTE)推進による放熱設計の精度向上を図るため、電子部品の発熱量を精度良く計測するシステムを開発。独自の推定アルゴリズムにより、多数の部品を基板に実装した状態で、回路を実際に動作させながら、個々の部品の発熱量を計測することが可能になった。これにより、熱解析シミュレーションを用いた設計プロセスの改善が可能になるという。

具体的には、電子部品の発熱量を5%以下の推定誤差で測定するアルゴリズムを開発した。高密度化するプリント配線板で電子部品から発生する熱は、プリント配線板経由で逃げるため、放熱経路は複雑化している。これを独自のアルゴリズムにより、これら放熱経路の放熱量(消費電力)をそれぞれ推定し、発熱量の測定を可能とした。

また、放熱設計の精度向上とともに、測定効率を改善した。PC用計測ソフトウェアを提供し、計測作業の効率化を実現する。回路を実際に動作させながら、測定対象の電子部品に測定ヘッドを取り付けるだけで、実動している電子部品の実際の発熱量データを得ることができる。

さらに、近年急速に普及している熱解析シミュレーションとの連携により、熱設計プロセスの効率化と高品質化を推進する。精度の高い発熱量をシミュレーションに入力することによって、従来発生していた予測誤差を大幅に改善できる。

同社では、今後も熱解析シミュレーションの受託解析と発熱量測定サービスの提供と合わせて、発熱量測定システムの販売を通し、最適なサーマルマネジメントによる高効率、高品質な設計プロセス環境提供を目指して、取り組んでいく方針としている。

なお、価格は80万円から。8月より受注を開始する。

電子部品発熱量測定システム「PM-100」の概要